中国との「統一」を阻止し、世界に承認される国家を 2009-04-13 11:58:25
宗像隆幸

中国との「統一」を阻止し、世界に承認される国家を 台湾に建設するための大衆運動について

2009年4月3日   宗像隆幸

目      次

1、中国の台湾に対する武力による威嚇は侵略行為である

2、「中華民国は主権国家としての資格を失い、その権利は 中華人民共和国に継承された」と国際連合は断定した

3、台湾の法的地位は未定であり、 その決定権は台湾人民だけが持っている

4、「台湾の法的地位未定」を認めた国連決議案は、 周恩来が起草した

5、米国は台湾問題で2回大失敗を犯した

6、米国がまた台湾問題で失敗すれば、
中国は東アジアと西太平洋を支配する

7、大衆運動で民主主義を守り、「統一」を阻止しなければならない

8、署名運動で国名を台湾共和国に変更できる

9、要 約

国名を台湾共和国に変更するだけで、国際社会は台湾を主権独立国家 として受け入れる。国名変更は署名運動で出来る。

1、中国の台湾に対する武力による威嚇も侵略行為である

2,300万台湾人民にとって最も重要な事は、台湾の独立と自由民主主義を守り、それを子孫に継承する事である。そのために台湾国民は、全力を尽くして闘わなければならない。

 現代の世界において、国家の独立を侵害する侵略行為は、国際法上の最も悪質な犯罪として国際社会から糾弾され、国際社会は独立を侵害された国家を支援する事が定められている。

 国際連合憲章は、第2条第4項に「全ての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる国の領土保全または政治的独立に対するものも、また国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」と定めている。中華人民共和国は「台湾を統一するためには武力行使もあり得る」と公言しているが、これは明白な「武力による威嚇」であり、国際法で禁じられた侵略行為である。

 それにもかかわらず、国際社会は中国を厳しく糾弾して制裁を加えた事がない。その最大の原因は、台湾に存在する国家が国際連合から追放された時の国名「Republic of Chaina(中華民国)」を用いているために、台湾は主権国家ではないと見なされている事と、台湾問題をChina (中国)の国内問題と誤認している国が多い事である。

2、「中華民国は主権国家としての資格を失い、その権利は
中華人民共和国に継承された」と国際連合は断定した

 中華民国は、1971年に国連(国際連合)とその関係機関から追放され、それまで国交のあった国々からも次々に断交されたが、中国国民党は中国の圧力が原因であると弁解してきた。しかし、世界には大国と対立している小国は少なくないが、大国の圧力によって中華民国のように国際社会で孤立させられた例はない。現在、国連には 191か国が加盟しており、それらの国は世界の殆どの国々と国交を保っている。これまで国連への加盟を希望する主権国家は、全て加盟を認められてきたのである。現在、中華民国を承認している20余か国はいずれも弱小国であり、弱小国は大国の圧力に弱いから、もし国民党の弁明が正しければ、これらの国々は真っ先に中華民国と断交している筈だ。国連が中華民国を追放したのは、中華民国には主権国家としての資格が欠如していると断定したからであり、そのために中華民国を承認していた国々も次々に承認を取り消したのである。現在も中華民国を承認している国々は、その事をあまり配慮せず、国益を優先しているに過ぎない。

 中国国民党は「国連から追放されたのではなく、自発的に脱退したのだ」と言い続けているが、これも見え透いた嘘である。1971年10月25日の深夜、国連総会は米国などが提出したいわゆる「逆重要事項指定決議案」(中華民国を国連から追放する事を、国連総会の3分の2以上の賛成を必要とする「重要事項」に指定する決議案)を賛成55票、反対59票、棄権と欠席17票で否決した。続いて第2758号決議案の投票が始まったが、「逆重要事項指定決議案」が否決された以上、この決議案が可決される事はわかりきっていたので、中華民国代表の周書楷(外交部長=外相)は退場した。周書楷が「追放を待たず、国連のあらゆる機関から自発的に脱退する」という声明を発表したのは、第2758号決議案が賛成76票、反対35票、棄権と欠席20票で可決された直後だったのである。

国連憲章には中華人民共和国の文字はなく、今でも中華民国が安全保障理事会の常任理事国であると書かれたままである。それなのに中華人民共和国が安保理常任理事国として国連に加盟しているのは、中華民国は主権国家としての資格を失い、中華民国が持っていた全ての権利は中華人民共和国に継承された、と1971年の国連総会決議によって認定されたからである。この国連総会2758号決議には、「中華人民共和国の代表が、国際連合における中国の唯一の合法的代表であり、蒋介石の代表を国際連合および全ての国際連合関係機関から即時追放する」と書かれている。「中華民国を追放する」ではなく、「蒋介石の代表を追放する」と書いてあるのは、中華民国は中国大陸の支配権を失った時点で、主権国家としての資格を失い、台湾で中華民国を名乗っているのは、中国の領土回復を策している蒋介石を領袖とする亡命者団体であるという意味なのだ。

 従って、中華民国を国名としている限り、台湾が国際社会に復帰する事は不可能なのである。

3、台湾の法的地位は未定であり、その決定権は台湾人民だけが持っている

 日本は1951年に締結されたサンフランシスコ平和条約で台湾に対する領有権を放棄したが、台湾の帰属については何も決定されなかったので、台湾の国際法上の地位は未定である。従って、台湾は中華民国の領土ではなく、中華民国の権利を継承した中華人民共和国の領土でもない。

 主権国家には、国際法で認められた領土とそこに住む人民、この領土と人民を統治する政府、この三つの存在が必須条件である。国際法で認められた領土を持たない中華民国は、主権国家ではないのだ。人民自決の権利は、国連憲章、植民地独立付与宣言、国際人権規約などによって確立された人民の権利である。従って、台湾の法的地位を決定する権利は、台湾人民だけが持っている権利であり、台湾人民が国際社会で認められる手段によって、台湾は台湾人民の領土である事を表明すれば、台湾の法的地位は確立されるのだ。

 1949年10月 1日に中華人民共和国が成立すると、ソビエト連邦を筆頭とする共産主義国家などがこの新国家を承認し、中華人民共和国を中国代表として国連に参加させるべきだと主張した。1950年 1月には自由主義陣営の英国も中華人民共和国を承認したので、間もなく世界の国々が中国(中華人民共和国)を承認して、国連にも参加させるものと思われていた。

 ところが1950年 6月25日、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の軍隊が韓国(大韓民国)に侵攻して、朝鮮戦争が始まった。北朝鮮軍はソ連から与えられた兵器で重装備しており、韓国は北朝鮮軍の侵攻を予想していなかったこともあって、戦争が始まると敗走に敗走を重ね、朝鮮半島の南端に追いつめられた。 7月 7日、国連安全保障理事会は、これを北朝鮮の侵略と断定して、韓国を救援するために国連軍を派遣する事を決定した。米軍を中心とする国連軍の反撃が始まると、今度は北朝鮮軍が敗走して中国との国境近くまで追いつめられた。すると、北朝鮮を支援するために中国軍が介入し、米軍を中心とする国連軍と中国軍を中心とする北朝鮮側の軍隊が激しい戦闘を交える事になった。

 1953年7月に休戦協定が成立して朝鮮戦争は終わったが、多数の戦死傷者を出した事から米国民の中国に対する反感も強く、アメリカ政府は共産勢力の膨張を阻止するために、中国封じ込め政策を取った。この政策の一環として、米国は蒋介石政権を支援し、中華民国の国連議席も擁護した。しかし、中国の寸土をも支配していない中華民国が、中国代表として国連安保理の常任理事国の地位を占めている事に対して、反対する国の数が次第に増えてきた。ニクソン米大統領は、それまでの中国封じ込め政策を転換し、中国との関係を改善するために、1971年7月にキッシンジャー大統領特別補佐官を中国に派遣した。そのために、この年の国連総会で中国の国連加盟が実現すると予想された。

 しかし、中国は安保理常任理事国として国連に加盟するだけでなく、同時に中華民国を国連の一般議席からも追放しようと考えた。国連憲章第6条(除名)は、「国際連合加盟国は、総会が安全保障理事会の勧告に基づいて、この機構から除名する事が出来る」と規定している。もし、第2758号決議案に「中華民国を国際連合から追放する」と書けば、中華民国を国連の一般議席から追放する事に強く反対していた米国が、安全保障理事会で拒否権を行使するだけで、この決議案は葬られる事になる。そこで周恩来・中国総理が苦肉の策として考えついたのは、「台湾の法的地位未定」を利用する事であった。しかし、この問題が国連で論議されたら、「台湾の法的地位が確定するまで、台湾を統治している中華民国を一般議席に残すべきだ」という主張が出されるであろうし、台湾の領有権に対して中国は何らの権利も持っていない事が明白になってしまう。そこで周恩来は、米国との交渉で「台湾の法的地位未定」を問題化させない事を要求したのである。

4、「台湾の法的地位未定」を認めた国連決議案は、周恩来が起草した

 この経緯は、2001年の機密解除によって、米国政府が公表した「周恩来・中国総理とキッシンジャー・米大統領特別補佐官との機密会談記録」によって明らかにされている。そこで、『周恩来、キッシンジャー機密会談録』(毛里和子・増田弘監訳、岩波書店2004年刊)を参考にして、その経緯を説明しよう。1971年の7月と10月に訪中したキッシンジャーは、周恩来と14回会談を行っている。

  7月9日に行われた第1回会談で周恩来は、「(米国政府は)台湾の地位は未定だと宣言しました。今日に至るまで、貴国の国務省スポークスマンは、それが貴国の立場だと言っています。これが問題の核心です」と言っている。この年の4月28日にも米国務省スポークスマンは、「台湾の法的地位は未定である」と言明していたが、キッシンジャーは、「彼はそれを繰り返し言ってはいません」と答えている。

 7月10日の第2回会談で、キッシンジャーは周恩来が米国に要求した事を次の4点にまとめた。1、中華人民共和国を中国の唯一の正当な政府として認める事。2、台湾が中国に属することを認める事。3、「2つの中国」や「1つの中国、1つの台湾」を支持しない事。4、台湾独立運動を支持しない事。

 すると周恩来は、「国務省のスポークスマンが台湾の法的地位は未定だと言った時の事を昨日、私が言うと、あなたは『彼はそれを繰り返さなかった』と言いました」と、キッシンジャーの回答の不明確さを指摘した。そこでキッシンジャーが「これがあなたの第5項目ですか」と問うと、周恩来は「それを第5項目と考える事もできます」と答えている。

 それに対してキッシンジャーが「総理が挙げられた5項目について、4つは近い将来に出来ると思います。大統領は毛主席に、台湾独立運動を支持しないと私が申し上げた通りに繰り返す用意があるでしょう。また『1つの中国、1つの台湾』を支持しないと繰り返すことは確かです」と答えると、周恩来は「2つの中国も支持しませんね」と念を押している。キッシンジャーは、「大統領は必ず、2つの中国方式は支持しないと繰り返すでしょう。それゆえ総理の第2項目、台湾は中国の領土であると言う事ですが、他の3点から自ずと出てくる事でしょう。そうなると(大統領)選挙後まで残さざるを得ないのは、中華人民共和国が唯一の正当な政府である事を公式に受け入れる事だけです。それでも方向ははっきりしています」と答えた。

 キッシンジャーが「台湾が中国の領土であることは、他の3点から自ずと出てくる」と言ったのは、米国がこのように台湾を見放した態度をとれば、台湾を支配している蒋介石・経国父子の政権は中国の要求する「統一」を受け入れざるを得なくなる、と考えていた事を示している。キッシンジャーは周恩来と14回も会談を行いながら、台湾人民の事には一言も触れていない。彼の念頭に台湾の人々の事は全く無かったのだ。それに続くキッシンジャーの話しは、ニクソンが大統領に再選されたら、米国は中国を公式に承認する予定である事を説明したものである。

 このようにキッシンジャーは中国の要求を丸呑みにするような態度を示したので、周恩来は彼が中国の味方である事を確信したのであろう。キッシンジャーが2回目に訪中した時、10月21日に行われた会談で周恩来は本音を打ち明けている。

 周恩来は「問題は、他の決議案は、国連の議席を含む、国連における中国の法的権利すべての回復を求めているという事です。この決議案の下では、台湾の地位に関する条項を挿入する事は不可能ですし、もしこれが通れば、台湾の地位は未定と言う事になります」と語ったのだ。「他の決議案」というのは、中華民国を国連の一般議席に残すために米国などが提出した決議案とは別の決議案と言う意味で、第2758決議案を指している。この決議案はアルバニア決議案と呼ばれたが、実際は周恩来が起草したものである。「この決議案の下では、台湾の地位に関する条項を挿入する事は不可能」というのは、「台湾は中華人民共和国に属する」という条項を入れると、台湾の地位未定論が浮上する事になるからだ。

 「他の決議案」というのは第2758号決議案であることが明白なのに、キッシンジャーは「アルバニア決議案でもですか?」とたずねている。キッシンジャーでさえ、第2758号決議案に「台湾の法的地位は未定である」という意味が含まれている事に気付いていなかったのだ。周恩来は、「もちろん、アルバニア決議案を支持する国々は、このような側面について考えた事はないでしょう」と語っているが、アルバニア決議案に反対した国々の国連代表たちの殆ども、この事に気付かなかったようである。しかし、国連総会がこの決議案を可決したのだから、国連は台湾の法的地位が未定である事を認めているのだ。中国は台湾が自国の領土であると繰り返し主張しているが、アルバニア決議案を書いたのは周恩来なのだから、中国の指導者たちがその事を知らない訳はないのである。

5、米国は台湾問題で2回大失敗を犯した

 今日の世界で台湾は、大戦が起こる可能性の最も大きな地域である。

 米国は1979年に制定された台湾関係法によって、台湾防衛の決意を明確にしている。台湾関係法の第2条に「西太平洋における平和、安全および安定の確保に協力する」「台湾の全ての人民の人権の維持と向上が、合衆国の目標である事をここに再び宣言する」と規定されているように、これは西太平洋の平和を確保し、台湾人民の人権を守り向上させるために制定された法律である。

 中華人民共和国は、1949年の建国以来、武力を用いても台湾を併合する意志がある事を繰り返し表明してきた。中国が膨大な資金を投じて海軍と空軍を増強しているのは、台湾を併合して南シナ海と東シナ海を支配下に置き、東アジアと西太平洋における覇権を確立するためである。これは東アジアと西太平洋の国々の存亡にかかわる事であり、中国がこの目的を達成したら、米国の影響力はこの地域から排除される事になる。中国軍の幹部は、ハワイから西のアジア太平洋地域を中国の支配下に置く意図がある事を公言している。そのキーポイントになるのが台湾であり、台湾はそれほど重要な地政学的地位を占めているのだ。もし、台湾をめぐって中国と米国が戦う事になれば、世界を揺るがす大戦に発展する可能性が大きいのである。

 このような危機を未然に防ぐためには、台湾を主権国家として国際社会に受け入れる事により、中国の主張する「台湾統一」が侵略に他ならない事を明確にする必要がある。しかし、台湾が中華民国と称している限り、国際社会が台湾を主権国家として認める事は出来ない。国連が中華民国の全ての権利は中華人民共和国に継承されたと認めている事と、中華民国憲法が中国の全領土を自国領と規定している事が、中国の台湾への武力行使を正当化しているのである。

 台湾人民が台湾憲法を制定して中華民国憲法を廃棄する事により、台湾が中国とは全く異なる国家である事を明確にすれば、国際社会は台湾を主権国家として認め、台湾を国際的安全保障体制に組みこむ事が出来るのである。

  191の国連加盟国の中には人口が100万人に満たない国が40もあり、その人口を合わせても1,300万人ほどしかない。台湾の人口は2,300万人だから、それは47の人口の少国の人口総計に匹敵する。台湾は小さな島国と思われているが、その面積は36,000㎢で、21の面積小国の総面積とほぼ同じである。2008年の台湾の国民総生産(GNP)は約4,000億米ドル、一人当たり 17,500米ドルで、台湾は経済先進国でもある。これだけの国家が、世界でただ1国、国際社会から疎外されている事が異常なのだ。

 2000年と2004年の総統選挙で民主進歩党の陳水扁が当選し、民主進歩党は 8年間、政権を担当した。民主進歩党の綱領は、「台湾主権の現実に基づいて独立建国し、新憲法を制定する事によって、法と政治の体系を台湾社会の現実に合致させると共に、国際法の原則に基づいて国際社会に復帰する」と、台湾憲法を制定して国際社会に復帰する事が民主進歩党の基本目標である事を明確に定めている。

 2003年 9月28日、陳水扁総統は2004年の選挙で総統に再選されたら、2006年に国民投票を行って新憲法を制定する事を目標に掲げた。すると中国は、「如何なる犠牲を払っても、台湾の独立は許さない」と台湾人民を恫喝した。台湾の「統一派」も中国に同調して、「中国の武力攻撃を招く危険な政策だ」と、新憲法制定に猛反対した。同年12月 9日、ブッシュ米大統領は訪米した中国の温家宝首相と会談した後の記者会見で、「現状を変える中国、台湾の如何なる一方的な決定にも反対する。現状を変えようとする台湾の指導者の最近の言動に反対する」と、陳総統を非難した。その後も米国政府は、台湾を中国の一部とする虚構を改めて少しでも現実に合致させようとする民主進歩党の政策にことごとく反対した。台湾の防衛に重要な協力をしている米国が反対することは出来ない、という気持が台湾人民の間に広く浸透し、台湾の将来を真剣に考えている台湾の人々も意気消沈したのである。

 米国政府は、台湾の現実を直視して、台湾問題を根本的に解決しようと考えた事があるのだろうか。米国政府の主張する「台湾の現状維持」とは、台湾に「台湾は中国の一部である」という虚構を守らせることであり、これこそ中国の望む所である。

 2005年7月、中国の国防大学の高級幹部、朱成虎少将は、「(米国との戦争になったら)我々は西安以東の全ての都市が破壊される事を覚悟しているが、米国も西海岸の都市が100か200破壊される事を覚悟せねばならない」と外国人記者団に語った。その後も中国軍の幹部たちは、米国の軍幹部や高級官僚に会うたびに彼等を脅し続けている。米国務省の高級官僚だった人物も、「我々が何時も心配したのは、台湾海峡で戦争が起こる事だった」と語っている。米国政府は中国に脅されて、台湾に「現状維持を守れ」と圧力をかけているのだ。台湾の「現状」が続けば、台湾を国際的安全保障体制に加える事は不可能であり、米国は台湾を見捨てるか、中国と戦うかの選択を迫られる日が近づくだけである。台湾の「現状維持」は、中国以外の全ての国の国益に反するばかりか、米国の建国理念に基づく自由民主主義と人権を尊重する伝統的政策にも反している。

 自由民主主義の基本原則は、自分たちが直接に制定した法か、自分たちが選出した代表によって制定された法に、自分たち自身が従う事である。中華民国憲法は、中国で中国人によって制定された中国の憲法であり、台湾人にとっては他国の憲法なのだ。台湾人民が自ら自分たちの憲法を制定しない限り、台湾の法的民主化は達成できないのである。国際人権規約が第1条に「人民自決権」を掲げている事に象徴されるように、最も基本的な人権が人民自決権である事は言うまでもない。ところが米国政府は、これまでも目先のことにとらわれた政策で、台湾問題を解決する好機を失い、台湾人民に大きな苦しみを与えてきた。

 まず指摘できるのは、日本が第2次世界大戦に敗北したとき、蒋介石に台湾を占領させた事である。1944年に米軍の上陸予定地がフィリピンに変更されるまで、米軍は日本の南進基地であった台湾を占領する予定だったので、台湾研究班が編成された。その責任者であったジョージ・カーは、1942年に提出した報告書で、台湾を蒋介石政権の支配下に置くべきではない、と述べている。中国には台湾のように発達した複雑な経済社会を管理できる行政官や技術者がおらず、台湾の膨大な富は蒋介石の一族や国民党幹部に搾取される事になる、というのがその理由である。彼はその後、はっきりとした台湾政策が必要であるとしてワシントンに提出した具申書の中に「台湾を連合国の信託統治にして、その間に台湾人たちが自分達で自分たちの政治運命を決める事が出来るよう国民投票の準備をすること」も選択肢の一つであると書いた、と述べている。(注:ジョージ H カー著、蕭成美訳『裏切られた台湾』日本で同時代社が2006年に発行、P44〜46。原書のGeorge H Kerr 『Formosa Betrayed』は1965年に米国のボストン市で発行されている)

 台湾を蒋介石政権が支配したために、台湾はカーが予言した通り、1947年には搾取と圧政に対する台湾人の不満が爆発して起きた2・28事件で2、3万人の台湾人が虐殺され、1987年まで38年間も続いた世界史上最長の戒厳令の下で台湾の人々は白色テロ(恐怖政治)に苦しめられたのである。台湾を蒋介石政権の支配下に置くきっかけになったのは、1943年11月にエジプトのカイロで行われた米、英、中の3国首脳会議で、台湾の事は何も知らないローズヴェルト米大統領が、蒋介石の駆け引きに乗せられて、台湾を中華民国に「返還する」と話した事であった。この3国首脳会の後で発表された声明は、「カイロ宣言」と大げさな名称で呼ばれているが、これは条約でもなければ協定でもなく、単なる報道関係者用のプレスリリースに過ぎず、3首脳の署名もない。カイロ宣言には「満州も中華民国に返還する」と書かれているが、日本代表が降伏文書に署名した1945年9月2日にマッカーサー連合国最高司令官が発令した一般命令第1号によって、満州はソ連が占領した。ジョージ・カーが提案したように、台湾を連合国の信託統治下に置く事も出来たのである。

 第2次大戦後、列強の植民地だった国々は、次々と独立した。1960年の国連総会が決議した植民地独立付与宣言の第2項「自決権」は、「全ての人民は自決の権利を有し、この権利によって、その政治的地位を自由に決定し、その経済的、社会的および文化的発展を自由に追求する」と定めている。1960年代にはアジア、アフリカの植民地が続々と独立したが、もし日本と戦った連合国が台湾を信託統治下に置いていたら、教育水準が高く、経済的にも発達していた台湾は、どこよりも早く独立を達成していた事であろう。なお、植民地独立付与宣言の「自決権」は、1966年の国連総会が決議した国際人権規約の第1条「人民の自決の権利」にそっくり採択されている。

 1971年にも米国政府は、台湾を国際法で認められる主権を持つ独立国家とする機会を失った。あのときの国連総会で米国代表か米国の同盟国の代表が、「台湾の法的地位は未定であり、中国は国連に参加しても、台湾を代表する事は出来ない。国連で台湾人民を代表するのは誰なのか?」と問題を提起するだけで十分だったのである。そうすれば、世界の国々の代表たちが、台湾の法的地位が未定である事に気付き、この問題が論議されたら、第2758号決議案に「台湾の法的地位未定」が含まれている事も理解したであろう。そして当然、「台湾の将来は台湾人民によって決定されるべきである」と主張する代表たちも現われて、おそらく「台湾の人民自決が実現するまで、現実に台湾を統治している中華民国の国連の一般議席は残す」という結果になっていた事であろう。ところが、周恩来の要求をキッシンジャーが受け入れたために、米国はそのような問題提起を行わず、米国の同盟国にもそのような発言をせぬよう要求したのか、この重要な問題を提起する国はなかった。

 台湾に対して大きな影響力を持っている米国には、このような2回の大失敗に対する責任がある。台湾問題の重大性を認識しなければ、米国政府は3度目の今度は致命的な失敗を犯す可能性が大きいのだ。

6、米国がまた台湾問題で失敗すれば、中国は東アジアと西太平洋を支配する

 現在の台湾政府は、馬英九総統を中心とする中国国民党の「統一派」が支配している。李登輝総統時代の国民党政権は、台湾が一つの独立国家である現実に合わせて中華民国の台湾化政策を推進し、李総統は「台湾と中国の関係は、国家と国家の関係、少なくとも特殊な国家と国家の関係である」と語った。中国はこの李登輝発言に怒ったが、その後を継いだ民主進歩党政権も台湾化政策を推進し、陳水扁総統は「台湾と中国は『一辺一国』(それぞれ一つの国)である」と明言した。ところが馬英九総統は、それを覆して「中国大陸も中華民国の領土であり、台湾はその一部である」と、「一つの中国論」を唱えて中国を喜ばせ、「統一政策」を推進している。馬英九はこの「一つの中国」は中華民国憲法に基づくものであると言っているが、世界の人々は「一つの中国」と聞いたら、中華人民共和国の事であると思い、誰も中華民国の事など考える訳がない。

2007年に陳水扁総統が「台湾の名儀で国連に参加したい」という申請書を国連に送ったとき、潘基文・国連事務総長は第2758号決議を理由に、その申請書の受理を拒否した。国連事務総長までが、「台湾は中国の一部である」と誤解していたのである。米国政府と日本政府は、潘事務総長に対して「台湾に関する地位認定の解釈は不適切である」と申し入れた。米国も日本も「台湾の法的地位は未定である」という公式見解を変えた訳ではない。米国と日本が、「一つの中国とは中華人民共和国の事であるが、台湾の法的地位は未定であり、台湾は中国の領土ではない」と公式に再確認しないから、このような誤解が広まるのである。  台湾の国民の中で中国との統一を希望しているのは、大戦後に中国から台湾に渡ってきた人々を中心とする数パーセントに過ぎない。馬英九は香港生まれで、幼い時に両親と一緒に台湾へ来たのだが、中国人意識が強い。しかし、馬英九は総統選挙のとき、自分は台湾人であると強調し、総統に当選しても「統一」政策は推進しないと公約した。騙されて馬英九に投票した人々も怒り、台湾各地で展開されている反馬英九運動に参加している人も多い。国民党員でも「統一」に賛成しているのは、ごく少数に過ぎないのだ

 ジョージ・カーは「中国人は我々が騙されやすく出来ている事をよく知っている。事実、我々はよく騙された」と書いている。米国政府の対台湾政策での最初の大失敗は、ローズヴェルト大統領が蒋介石に騙された事から起きた。 2回目は、キッシンジャーとニクソンが周恩来に騙されたためであった。中国人に騙される事によって、米国政府は 2回、台湾を裏切ったのである。今また米国政府は、中国共産党と台湾の「統一派」に騙されて、今度は致命的な 3度目の大失敗を演じようとしているように思われる。それを防ぐには、どうすれば良いのであろうか。それには、米国議会によって台湾関係法が制定された時の事が、良い参考になるのであろう。

 1978年、カーター米大統領は、中国と秘密交渉を行って、12月16日に突然、1979年1月 1日に中華人民共和国と国交を樹立して中華民国との国交を断絶し、その 1年後に米国と中華民国の相互防衛条約も廃棄することを発表した。しかし、カーター政権は、その後の台湾との関係をどうするのか、台湾の安全保障をどうするのかについて、明確な政策を決めていなかったのである。この重大な台湾の危機に際して、蒋経国総統は米国の裏切りを声高に批判するだけで、どう対処して良いかわからない状態であった。

 このとき素早く動いたのは、米国で台湾独立運動を行っていた台湾人と緊密だった数人の米議員であった。彼等は台湾問題を良く理解していたので、数人の台湾独立運動の幹部達と相談しながら、台湾関係法の草案を作り、それを上下両院が採択して 4月10日にカーター大統領が署名し、1979年 1月 1日に遡って台湾関係法は発効した。この台湾関係法によって、米国はその後の台湾の安全を保障し、米国と台湾の緊密な関係も維持されてきたのである。台湾関係法の制定に尽力した米議員達は、その後も台湾の民主化運動に協力し、戒厳令に基づいて政党結成が禁止されているのを無視して1986年に民主進歩党が結成されたとき、「戒厳令の解除、新党結成の自由を認める事、民主的議会制度の実現、言論・出版・集会の自由の保障」などを要求して、蒋経国政権に圧力をかけた。米国政府の失敗を防ぐためには、台湾人民の多数意志を代表するような民間組織の代表などが、米国の議員達に働きかける事が有効だと思われる。

 もし、中国が台湾を支配下に置いたら、東アジアは力の均衡が崩れて大混乱に陥る事になろう。中国が日本の生命線であるシーレーンを支配する事になり、この地域の平和と安定を守っている米・日安全保障体制が崩壊するからである。

 中国は1992年に制定した領海法で東シナ海と南シナ海の大部分を自国の領海と定め、この領海に許可なく進入した外国の軍艦と領空に進入した軍用機を排除する権限を中国軍に与えた。東シナ海には日本の尖閣諸島があり、中国がこの海域で石油やガスを採掘している事もあって、日本のメディアでもときどき報道され、国会でも論議されているが、南シナ海の重大性は殆ど注目されていない。しかし、中国が領海だと主張している南シナ海の真中を通っているシーレーンこそ、日本の生命線なのである。日本はこのシーレーンを通じて経済関係の緊密な東南アジア諸国と交易を行い、さらにマラッカ海峡を通りインド洋に出て、中東諸国から石油や天然ガスを輸入している。現在は米海軍の第7艦隊がこのシーレーンを守っているので、世界各国の船舶は自由に航行できるが、中国が台湾を併合したら、台湾海峡はもちろん、もっと重要なフィリピンと台湾の間のバシー海峡も中国に支配される事になり、米海軍といえども、中国の許可なしには南シナ海に入る事さえできなくなる。そうなると、東南アジア諸国も日本も、中国の強力な影響下に置かれる事になってしまう。

 この深刻な問題について、日本には早くから警鐘を鳴らしている人達がいる。例えば、中国の軍事・外交問題専門家の平松茂雄博士は、『中国は日本を併合する』(講談社インターナショナル、2006年刊)や『中国は日本を奪い尽くす』(PHP 研究所2007年刊)など、多くの論文や著書で、台湾の独立を守れるかどうかが、日本の存亡に直結している事を説明している。また、もと外交官で外交問題専門家の岡崎久彦氏は、『台湾問題は日本問題』(海童社2008年刊)に象徴される多数の論文や著書で、日本と台湾は運命共同体であることを説いてきた。

 中国は空母の建造に着手し、本格的な海洋艦隊の建設を推進している。もし、中国が日本を属国にして、その資本と技術を利用できるようになったら、中国が米国に対抗し得る軍事力を建設する事も可能になろう。ソビエト連邦は経済崩壊によって米国との冷戦に敗れたが、米国はソビエトよりはるかに強大な敵と対決する事になるのだ。日本と台湾が運命共同体である事を日本の指導的な立場にある人々が認識するようになれば、その重大性は米国にも伝えられて、米・日同盟は台湾の防衛に全力を尽くす事になるであろう。台湾人の多くは、米国の力は認識しているが、日本は力にならないと思っている。日本の現状を見たら、そう思うのも無理はないが、日本を通じて米国の台湾に対する理解を深めさせる事も、台湾人が追求すべき一つの道なのだ。日本人と台湾人は、協力して米国の3度目の大失敗を防がなくてはならないのである。

7、大衆運動で民主主義を守り、「統一」を阻止しなければならない

 馬英九政権は、「統一」政策を推進すると同時に、さまざまな手段を用いて「統一」政策に反対する言論機関や政治家、財界人などに圧力を加えている。これは民主主義を破壊して政権の独裁化を推進する行為である。もし、「統一」派が独裁権力を掌握したら、2012年に民主的な総統選挙は行われず、急速な「統一」の実現に向かう事になろう。国民党が立法院で圧倒的多数を制している現状では、大衆運動以外に民主主義を守り「統一」を阻止する手段はない。

 中国共産党と台湾の「統一」派は、軍事戦略と経済的手段によって、「統一」を実現しようとしている。中国の戦わずして台湾を併合する軍事戦略は、「統一を受け入れなければ、武力行使もあり得る」と軍事力で台湾人民を威嚇しながら、台湾の政府に「平和協定」を受け入れさせる事である。2005年4月に胡錦濤(中国共産党総書記)と連戦(中国国民党主席)は、会談を行って「一つの中国の原則の下で、台湾独立に反対し、台湾海峡の平和と安全のために、平和協定を締結して、敵対状態を終結する」事で合意した。2007年10月の中国共産党全国代表大会で胡錦濤は、「一つの中国の原則の下で、両岸の敵対状態を終結させる協議を行い、平和協定を終結したい」と語った。それを受け入れて馬英九は、「平和協定」の締結を公約したのである。

 もし、「平和協定」が締結されたら、台湾と中国の軍隊は台湾と中国で共同軍事演習を繰り返し、中国の艦船や空軍機が台湾の軍港や空軍基地を利用する事になり、整備や補給などの名目で中国の軍人がそれらの基地に配置されるであろう。そうしているうちに中国の艦船や空軍機を何時でも台湾に送り込めるようになれば、中国は簡単に台湾を占領できる状態になってしまう。米国が反対したのか、馬英九は「平和協定」に慎重な姿勢を示すようになったが、諦めた訳ではなかろう。

 「統一」を推進する経済的手段の一つは、中国と台湾の共同市場の創設であり、台湾経済を中国経済に呑み込む方法である。この共同市場の創設については台湾で猛烈な反対が起きたために馬英九は一歩一歩後退しているが、まだ諦めた訳ではなく、現在は両岸経済協力枠組協定(ECFA)を締結しようとしている。台湾ではこの協定も、「統一」を推進する1つの手段と考えて、多くの人々が反対しているのが現状である。

8、署名運動で国名を台湾共和国に変更できる

 これまで述べてきたように、大衆運動によって民主主義を守り、「統一」の手段としての平和協定や「統一」を促進する経済協定の締結を阻止する事は、いずれも防衛的手段であり、それだけでは台湾の安全保障体制を確立する事は出来ない。台湾の安全保障体制を確立するためには、台湾が世界の他の国々と同じように、国際社会に受け入れられる事が必要である。台湾では政府与党だけでなく、野党も「台湾は主権独立国である」と主張している。しかし、主権国家であると自己主張するだけで、国際社会によって主権国家である事が認められなければ意味がない。前に述べたように、台湾が中華民国を国名としている限り、国際社会は台湾を主権国家として承認する事は出来ないのだ。

 台湾には主権国家に必要な領土と人民と政府の 3条件が揃っているのだから、国名を「台湾共和国」に変更すれば、台湾は完全な主権国家になるのである。この国名変更を実現するためには、署名運動が有効であろう。2004年 2月28日、 200万人を超える台湾の人々が、中国の台湾侵略に反対する意思表示として、手を繋いで人間の鎖を作った。中華民国(Republic of China)を台湾共和国(Republic of Taiwan)に変えるだけで国際社会に参入する条件が整うのだから、台湾国民の圧倒的多数の署名を集める事も出来る筈だ。

 世界の民主主義国家は、台湾国民の圧倒的多数意志に基づく国名変更に反対できる訳はなく、それを支持してこそ本物の民主主義国家と言えるのである。例え民主主義国家でなくても、この国名変更に反対して人民自決の原則を蹂躙する事は許されない。もし、中国が台湾の国名変更に反対して武力を行使すれば、この正当化する如何なる名分もない侵略行為は、国際社会によって糾弾される事になる。米国が、自国の国益と威信を守るために、国際法と台湾関係法に基づいて、台湾の防衛に協力する事は疑いない。中国もそれを知らない筈はないし、現在の中国には台湾を武力で占領する力もないのだから、どれほど威嚇を行おうと、不利益にしかならない武力行使を行う事はないであろう。

 台湾の国名変更は、中華民国憲法の規定に従う必要はない。これは国家主権の問題であり、主権者たる国民の意志が優先されるからである。もともと中華民国憲法は占領軍が台湾人民に押しつけた中国の憲法であり、台湾の憲法ではない。法治国家には国家の基本法が必要だから、やむなく台湾で用いられているだけであって、中華民国を主権国家として認めていない国際社会は、中華民国憲法も認めていないのだ。

「国名の中華民国を台湾共和国に変更する。この国名と矛盾する中華民国憲法の条項は無効とし、出来るだけ早く台湾共和国憲法を制定する」事に賛成する署名を集めるのである。国民党が立法院で絶対多数を占めていても、主権者の圧倒的多数意志には従わざるを得ないであろう。集まった署名に疑問を呈する者があれば、国民投票で確認すれば良い。

 現在、台湾の国民は政権与党も野党も信用していない。国民党員の大多数は「統一」に反対なのに、少数の権力者の国民に対する裏切りを阻止できないし、民主進歩党は8年間も政権の座にありながら、支持者の期待を裏切ったからである。台湾の若者達は政治に無関心だと言われているが、彼等の期待に応える政党や組織が存在しないから、どのような政治活動を行うべきかわからないというのが実情であろう。若者達の中には、自分達の国家が存亡の危機に瀕している事を肌身に感じている者も少なくない筈である。この危機の深刻さを認識し、如何にすればこの危機を脱して自分達の平和で安定した国家を建設できるかという事を知れば、彼等は喜んでその運動に身を投じるであろう。それが若者ではないか。

署名運動によって国名変更に成功すれば、台湾は立派な主権国家として世界に承認され、国際社会に参加して平和で安定した自分達の国家を建設できる事を認識したら、そのような若者達を含めて多数の台湾人がこの運動に参加するであろう。この全国民を対象とする署名運動が成功すれば、台湾の人々の主権者としての意識と責任感も高まり、この大衆運動の中から、国民の期待に応える新しい政党や指導者が現われる事も期待できる。もし、そのような政党が結成されたら、既存の政党の中からも多くの人々が参加すること事であろう。台湾人民に信頼される政党が台湾の政権を担当するようになったとき、平和で安定した自由民主主義国家が台湾に建設されるのである。

要 約

1、中国の台湾に対する武力による威嚇も、国際法で禁じられた侵略である。

2、1971年に蒋介石政権を追放した国連総会2758号決議は、「中華民国は主権国家としての資格を失い、その権利は中華人民共和国に継承された」との判断に基づいている。従って中華民国を国名としている限り、台湾は国際社会に復帰する事は不可能である。

3、日本は1951年に締結されたサンフランシスコ平和条約で台湾の領有権を放棄したが、台湾の帰属については何も決定されなかったので、台湾の国際法上の地位は未定である。従って、台湾は中華民国の領土ではなく、中華人民共和国の領土でもない。確立された国際法である人民自決の原則に基づき、台湾の法的地位を決定する権利は台湾人民だけが持っている。台湾人民が「台湾は台湾人民の領土であり、その国名は台湾共和国である」事を、国際社会で認められる手段によって表示すれば、台湾は完全な主権独立国家になり、国際社会に受け入れられる。

4、国連総会2758号決議には、「台湾の法的地位は未定である」という意味が含まれている。この決議案は中国の周恩来総理が起草したものであるが、それ以外に中華民国を国連から追放する方法はなかったので、やむをえず周恩来はこの手段を用いたのである。従って、中華人民共和国の首脳部は台湾が中華人民共和国の領土でない事を知っている。

5、米国は台湾問題で2回大失敗を犯した。最初の大失敗は、その必要がなかったのに、蒋介石に台湾占領を命じた事である。2回目の大失敗は、1971年に国連総会で第2758号決議案が討議されたとき、米国が「台湾の法的地位は未定であり、中国は国連に参加しても台湾を代表する事は出来ない。国連で台湾人民を代表するのは誰なのか?」と問題を提起するだけで、中華民国の国連の一般議席は簡単に守る事が出来たのに、それを怠ったために台湾が国際社会で孤立した事である。

6、中国が台湾を支配すれば、中国は南シナ海を支配する事になる。日本と東南アジア諸国の生命線であるシーレーンは南シナ海を通っているので、南シナ海を支配した中国は、これらの国々の生命線も支配する事になるのだ。そうなれば、中国は日本の資本と技術を利用して、軍事的にも経済的にも超大国になるであろう。米国の勢力は東アジアと西太平洋から排除され、米国はかつてのソヴィエト連邦よりはるかに強力な中国と敵対する事になるのだ。もし、米国がこの事を認識せずに台湾問題で3度目の大失敗を犯せば、米国も存亡の危機に直面する事になるのである。台湾と日本は運命共同体であり、米国がこのような大失敗を犯さぬよう、台湾人と日本人は協力して米国に働きかけねばならない。 

7、中国共産党は、台湾で政権を握った「統一派」を利用して、軍事戦略と経済的手段で「統一」を推進しようとしている。軍事戦略は中国と台湾が「平和協定」を締結して中国軍を何時でも台湾に送り込めるようにする事であり、経済的手段は「共同市場」を創設して台湾経済を中国経済に呑み込む方法である。台湾の野党が無力化している現在、それを阻止して台湾の独立を守る手段は、大衆運動以外にない。馬英九政権は、さまざまな手段で民主主義を破壊して、2012年に民主的な総統選挙を行わず、「統一派」が台湾の政権を握り続ける事を策している。それを防ぐ手段も、大衆運動以外にない。そのために、明確な目的と戦略の下に大衆運動を継続する事が必要である。

8、台湾の独立を守るためには、現在の台湾の国名である「中国(China)」を「台湾(Taiwan)」に変えて、台湾が中国とは異なる主権独立国家である事を明確にしなければならない。それを実現するために、「国名の中華民国を台湾共和国に変更する。この国名と矛盾する中華民国憲法の条項は無効とし、出来るだけ早く台湾共和国憲法を制定する」事に賛成する署名を集めるのである。

民進党の綱領は「新憲法を制定する事によって、法と政治の体系を台湾社会の現実に合致させると共に、国際法の原則に基づいて国際社会に復帰する」と定めている。しかし、民進党は8年間も政権を担当しながら、米国の反対と野党が立法院を制している事を理由に、一歩も前進できなかった。

米国には如何なる政権も反対できない基本原則がある。それは米国の建国理念であり、歴代の米国政府が世界に拡大する事を主張してきた自由民主主義に反対する行動である。自由民主主義を確立するために必要不可欠で、しかも1国の圧倒的多数の国民が賛成する改革に対しては、如何なる米国政府も絶対に反対出来ないのだ。自由民主主義の基本原則は、自分たちが直接に制定した法か、自分たちが選出した代表によって制定された法に従う事である。台湾人自身が自分たちの憲法を制定して、占領軍によって強制された外国の憲法を廃棄しなければ、台湾の民主化は確立できない。米国はもちろん、世界の民主主義国家は民主主義を確立するための国民の圧倒的多数意志は尊重しなければならないのである。例え民主主義国家でなくても、他国の国民の圧倒的多数意志を踏みにじる事は許されないのだ。

台湾人民の1割の人々が、台湾の独立と民主主義を守り、中国による台湾併合に反対する意志を表明するために、人間の鎖を作ったのである。署名によって台湾の独立と民主主義を守り、台湾が世界の他の国々と同じように国際社会に参加出来る事を知れば、台湾人民は喜んで署名するに違いない。

また台湾においては、立法院で絶対多数を占めている国民党であっても、国民の圧倒的多数が要求する新憲法制定を阻止できる訳はない。中国は世界世論と台湾人民の圧倒的多数意志に反して、台湾に武力行使をする事は出来ないし、仮にそのような非人道的な侵略行為を行ったとすれば、中国共産党政権は目的を達成できずに倒壊する事になろう。



 
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