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危機存亡のときを迎えた台湾と日本の役? |
2007-03-26 11:35:53 |
黄昭堂 |
2007年3月25日
日本李登輝友の会総会
アルカディア市谷
一 台湾の政治状況
12月に台湾立法委員の改選がおこなわれる。
先の憲法改正によって定員が半減し、現職立法委員(定員225)は来るべき改選での落選者を含めると、半数どころか、三分の二近くの数が淘汰される。そのうえ、新たに小選挙区制と政党比例代表\の併用制をとることになるので、所属政党を問わず各立法委員は戦々兢々として、公認獲得に血眼になるのは当然である。目下のところ、最大の敵は、ほんらい同志であるはずのおなじ政党の立候補予\定者たちである。
小選挙区であるゆえに、選挙戦に突入すれば、ブルー陣営(終極統一派の中国国民党、親民党)対グリーン陣営(独立派の民進党、台聯党)の一騎打ちになるが、同陣営内の調整がつかない選挙区では三つ巴えもしくは四つ巴えの乱戦になる。だから同陣営内の調整に成功した陣営が有利だが、友党間の調整自体が党勢の浮沈をかけた大仕事であり、ことは簡単にはいかない。
しかも現在すでに、来年3月になされる総統選挙での候補者選びの時期に入っており、主要政党内での総統候補選びをめぐる争いも熾烈である。常識的には中国国民党候補と民進党候補の一騎打ちになるはずだが、中国国民党主席の馬英九が汚職疑惑で主席の座から降り、総統選挙にでて疑惑をはらすという前代未聞の理由で立候補を表\明、これにたいして、汚職有罪判決で総統当選無効にもなれば大変だというので、王金平(立法院長)を担ぐ動きが活発である。両者の調整に失敗すれば、中国国民党は分裂選挙になる。
元来グリーン陣営に属しているのみか、民進党よりもさらにグリーンだと自負してきた台聯党は、ここのところ、「中間路線」に修正すると表\明して大きな反響をひきおこし、論議を呼んでいる。事の始まりは李登輝前総統の香港系週刊誌での発言であり、その動機については諸説紛々だったが、王金平の総統選挙立候補への姿勢をみると、なんだかシナリオが炙り出されつつあるようだ。王金平は李登輝総統時代に立法院長に登用され、李前総統が国民党総裁の座から追われるように降りたあとも、隠密裏に特殊な関係を維持してきたと見られている。
小選挙区制度最初の選挙に今後の政治生命を賭けた立法委員選挙に加えて、二大政党の次期総統候補指名と重なり、台湾は政治の暑い季節に入ったといってよい。国政選挙、台湾のばあい、立法委員選挙と総統選挙はいずれ劣らぬ国政選挙である。各政党とも血眼になるのは当然であり、縦横無尽の政略、陰謀術策が展開されているのだ。中国の露骨な軍事脅威を受けながら、かくも激しい選挙戦を展開していいかという非難もあろうが、とんでもない。「究極的に中国と統一する」ことを党是にしている中国国民党に政権を渡すわけにはいかないのだ。選挙戦も台湾防衛の一環である。こういう言い方は決して誇張ではない。P3C対潜哨戒機、PAC3ミサイル、デイーゼル潜水艦の購入予\算案は、ブッシュ大統領が許可してから六年たっているにもかかわらず、ブルー陣営の阻止にあい、いまだに立法院の第一の関門、手続き委員会をくぐれないでいるのだ。これらの特別軍事予\算を審議、採択するためにも、グリーン陣営は過半数を制しなければならない。
二 崩れた台湾海峡の軍事バランス
中国が台湾征服の能\力を保有するまでに台湾は主権を確立すべきだという主張はいまでも妥当である。中国は国威発揚の目玉にしている北京オリンピック開催年以前に、台湾にたいして武力を発動しないだろうといわれる2008年はすぐそこに迫まっている。2010年の上海万博までは大丈夫だという意見もあるが、そんなことはどうでもよい。いかなる状況下にあろうとも、台湾は中国からの侵攻に備えねばならない。これは鉄則である。当然ながら、味方は多ければ多いほどよく、中国の軍事行動を容認する国は少ないほどよい。
China(清)は台湾を支配したことはあるが、この点では、オランダ、スペインが先輩である。台湾はChinaの固有の領土ではないことは極めて明らかであり、中華人民共和国が一方的にその憲法での台湾領土権記載、領海法での台湾領土権記載、最近の「反国家分裂法」制定などの暴\挙は許すべきでない。2,300万台湾人の人権、生存権、自決権は尊重されるべきであることを国際社会に認識してもらう必要がある。これは台湾の官民を問わない外交最大の眼目ではあるが、国防の一環でもある。
目を国防に転じると、台中軍事力の差は歴然としている。台湾は海峡の制海、制空権を押さえていると長い間いわれてきたが、それが台湾民心安定剤として作用したことは確かである。だが、このマジナイはもはや通じない。台湾海峡の軍事バランスはすでに崩れているのだ。
中国の軍事拡大は台湾だけを標的にしているわけではない。それは日本さえをも通り超して、米国と拮抗するのに必要な底力が備わるまでつづくはずである。その日がくれば、台湾は熟柿が落ちるように手中に帰すと、中国は計算しているにちがいない。
日本もうかうかしてはいけない。日中戦争が起こることがあれば、通常兵力で日本は中国には劣らないとはいえ、最終勝利は核兵器を擁する中国のものであることはあきらかである。日本が勝っていると見られる通常兵力面でも、日中紛争において、中国は若干の兵力でジャブをくりだせばよく、軍事力を国際紛争解決の道具にしないという憲法をもつ日本は、窮屈極まりない状況下に置かれるのだ。中国は日本にとって手ごわい相手である。
中国の絶え間ない武力脅迫、後述のミサイル配備、実際には1996年の台湾近海へのミサイル発射など、台湾海峡の情勢は決して平穏ではないのだが、「三通」は全面開放ならずとも、結構\進んでおり、なかんずく台湾の対中投資は対外投資の70パーセント、世界の対中投資の半数を台湾が占めている現状は異様さを通り越して、台湾の対中防衛決心への疑念を起こさせる。台湾社会の日常生活には、いつでもありうるはずの中国からの奇襲攻撃に備える心構\えがみあたらない。その反面、世論調査によれば、中国が反対しないばあい、「独立」を望む人口は62パーセント。中国が反対した場合でも54パーセントとその士気は高い。国防支出は歴年平均でGDPの2.7パーセント、これが今後3パーセントに引き上げられる。日本の1パーセントに比べると、台湾は国防により意を用いているといえる。
しかし、あまりにも高価な兵器への躊躇もみられる。M9ミサイル(東風15号)1発を打ち落とすのにPAC3ミサイルが最低2発は必要とされ、来年には1000発に達するM9に対応するにはPAC3が最低2000発は必要になる計算だ。ところが現在たった6組だけのPAC3の予\算(ミサイル384発を含む)すら立法院の入り口ではばまれている。中国国民党が親民党のキッドナップに遭ったためだが、それだけが原因だともいえない。MD(ミサイル防衛)が「防衛」にとどまるだけでありながら、あまりにもカネがかかりすぎるのだ。M9が1発100万ドルであるのに対し、PAC3は300万ドル。60億ドルをはたいて2000発のPAC3をそろえたところで、中国のミサイルを打ちもらすことなく完全に阻止できるわけではないのだ。
さらに、空ではロシアの新鋭機をそろえた中国空軍、海軍の水上艦艇や海面下での圧倒的に優勢な潜水艦隊に備えねばならないとすれば、台湾は少なくない数の潜水艦のほかに対潜用のP3Cも必要だし、最後の最後まで国土を守る決心であれば、陸軍力も保持せねばならない。侵略者が台湾の西海岸にとどまらず、東海岸からの侵攻も考えられるので、防衛範囲は台湾全土にまたがる。
台湾は国防予\算をGDP比で3パーセントに上げる予\定だが、5パーセント以上にしたところで、焼け石に水だ。これでは、対中防衛に自信を持てといっても、説得力があろうはずはない。
中国を多少なりとも牽制しようとすれば、攻撃用の武器をもつべきだが、長年来米国はそれを阻止してきた。核や生化学兵器は厳しく禁止されている。人口2,300万の台湾が、どう背伸びして攻撃用兵器をそろえたところで、1兆ドルの外貨をためこんだ13億人の中国と比べれば、「防衛的」兵器でしかない。それでも米国は依然として、「攻撃用」兵器をもたせようとしない。台湾人が軍事問題から疎遠になることを奨励しているようにもみえる。もっとも米国側にいわしむれば、クリントン大統領時代に台湾からなされたP3C 12機、ディーゼル潜水艦8隻、PAC3 6組、計6,108億元(約185億ドル)の購入要求をブッシュ政権がようやく許可したのに、台湾の立法院がこれをボイコットし、すでに6年も経過(値引き交渉、装備簡単化などで、最終価格は4,740億元、約144億ドル)しているにもかかわらず、いまだ議案になっていない。台湾は自己防衛の決意を示さないで、米国の若者が台湾のために血を流すことばかり期待しているという米国側の不満もある。
こういう相互間の誤解はぜひとも解かねばならない。
台湾が米国の核の傘に入っているかどうか明らかではないが、台湾が日米両国の通常兵力から恩恵を蒙っていることは明白だ。こんないいかたは直ちに日本国憲法第9条がらみで反駁されそうだが、1952年の第一次日米安保(第1条:極東における平和と安全の維持)に始まり、1960年以降の改定日米安保(前文:両国が極東における国際平和および安全の維持に共通の関心)からこのかた、台湾は「極東の一部として」、日米安保条約の適用範囲内だった。台湾が安全を保つことができたのは、日米両国に負うところが大きい。これについて、台湾ではあまり語られていない。自分のふがいなさを露呈するからである。なかんずく、日本については、認めようともしない。有形、無形の集団安保が、東アジアの安全に寄与してきたのだから、かような事実をもっと強調すべきである。
これに関連して、日米両国民も台湾の貢献を知ってもらいたい。台湾も多額の国防予\算を年々割き、西太平洋列島チェーンの一部だけではあるが、相応の防衛分担をしてきた。台湾の分担がなかったら、日米の負担はそれだけ増大したはずだ。
三 台湾と日本は運命共同体
世界の人たちから、最もいいように使われている言葉は「平和」であろう。「われわれは平和を望んでいる」と口にするだけで、その人物、その人物が代弁する国は、「平和主義者」、「平和愛好国」になる。それらの行いも当然「平和のための行動」だ。ミサイルで宇宙衛星を撃破して、無数の破片を宇宙にばらまいても、「軍事目的に使用しない」、それは「平和的なもの」とのたもう。もう一種類の人は、「われわれは平和愛好国だから、相手国も善意で報いてくれるはずだ」と憲法にさえ記入して、それで安心している。それこそ、「メデタシ」「メデタシ」だ。
私は断言する。「日中間で友好関係はなりたたない」。もしあるとすれば、いつの日か、中国が日本を打ち負かして、思う存分溜飲を下げたあと、「日中友好を構\築する素地」が初めて生まれる。
台湾を略取することが、不義の行為であると中国が認識することはありえないし、台湾を手中にするまで、中国はあきらめないであろう。台湾と日本はいずれ劣らず、中国という蛇にみこまれた蛙みたいだが、台日ともに蛙になってはならない。この点だけでも、台日両国は運命共同体である。日本が弱くなれば、台湾は危なくなる。逆に、台湾が中国に屈してその領土になったら、台湾の軍事力を含め、そのすべての力は対日作戦に動員される。
他方、台湾も認識する必要がある。台湾が中国に併合されたら、それまで恐れていた中国の脅威から解放されるが、こんどは日米と戦うかもしれないという新たな問題に逢着するのだ。
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