「反国家分裂法」と日米台三国協力(講演要旨) 2005-08-24 16:48:49
黄昭堂
2005年 日、米、台三カ国協力シンポジウム in 東京
− 反国家分裂法と台湾海峡両岸関係 −
日時:2005年7月30日(土曜日)
会場:京王プラザホテルプラザ南館 5階「エミネンスホール」
主催:日華文化協会
後援:産経新聞社


「反国家分裂法」と日米台三国協力(講演要旨)


台湾安保協会理事長 黄昭堂


2005年3月14日に中国の立法機関である全人代は台湾をターゲットとした「反国家分裂法」を制定した。台湾が中国から分裂するか、そうなってしまうような重大事変が起こったときとか、平和的統一の可能性が完全に喪失した場合、中国政府は武力行使をし得るとしている。

その前提となっているのが、「台湾は中国の固有の領土」という神話であるが、中華人民共和国はその成立以来、今日に至るまでの五十六年間、一刻たりとも台湾を統治したことはないことは周知の事実である。過去において、中国は間断なく台湾を威嚇し、憲法(1982年)で台湾は中国の神聖な領土の一部分と明記しているのに、なおかつ「反国家分裂法」を制定したのは、人民解放軍の西太平洋海域進出に合わせた台湾揺さぶり攻勢の一環である。

中国は、反国家分裂法制定前に、その内容の保密を図る一方、部分的に内容をリークして国際社会の反応を探ったが、予想外の不評に驚き、条文の内容を柔らかめに手直ししたといわれる。それでも反国家分裂法への反発は収まらず、例えばEUの対中武器禁輸の解禁は延期されるはめになった。

中国によるこの度の対台湾攻勢は実にきめ細かい。中国は陳水扁政権に徹底的な対抗姿勢をとる中国国民党主席連戦のほか、陳政権とは対抗姿勢から融和の兆しをみせた親民党主席宋楚喩を中国に招待、「一つの中国」の合意をひきだすのに成功した。立法委員の過半数を制する野党のトップを「一つの中国」で囲むことに成功したことは、中国の国際宣伝戦に大いに役立つ。台湾への「統戦」手段として、果物の過剰生産で販売に七転八倒している台湾農民には関税免除の特典、台湾人子弟の中国留学生には、地元中国人学生なみのやすい学費のほか、奨学金を与える政策をとるなど、パンダ贈呈とともに一連の懐柔政策をうちだした。

台湾は中華民国の支配を受けて六十年になる。だが、その中華民国自体が大きく変わった。六十年のうちの五十五年間、つまり1949年以降の五十五年間、中華民国とはいっても、中国本土とは乖離し、内外ともにむしろ台湾という名称のほうが、とおりが良い。エスニシティの帰属意識にしても、「台湾人」が60パーセントで、「中国人」の10パーセントを凌駕している。台湾人アイデンティティの増大こそ、台湾防衛の最大の武器である。中国はこれをよく知っているからこそ、台湾の親中派養成にやっきになっているのだ。台湾は超大国中国の脅威にさらされている。日米の西太平洋防衛に一役買っている台湾を日米は激励すべきであって、台湾が台湾アイデンティティを強めていくさい、これに圧力をかけるべきではない。これが日米台三国協力の基本である。


 
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