| その一言 |
| 平田 隆太郎/元末次一郎事務所職員 2002年8月8日 原載 台湾青年 第500号 停刊記念号 2002年6月5日発行 |
感謝やねぎらいの一言が、長い間の苦労をいっぺんに吹き飛ばしてしまうことがある。 その日、数名の日本人一行が次々と李登輝総統の笑顔と握手で迎えられながら、総統官邸の応接室に入っていった。「宗像です」との自己紹介に、「おお、あなたが宗像さんですか。あなたのことはずっと気にしていましたよ」と李登輝さん。 すぐ後ろで現場を目撃した私は、「その一言」に深く感動した。宗像隆幸さんの四〇年余にわたる台湾独立運動への献身が、「その一言」で報われたな、と思ったからである。「あなたのことをずっと気にしていた」この場合、これ以上のねぎらいのことばがあっただろうか。 そんな日が来るとは、宗像さんも思ってはおられなかっただろう。青春期も壮年期も人生のすべてを台湾独立運動に捧げ、かつては彭明敏博士の台湾脱出まで推進した宗像さんが、表玄関から李登輝総統を訪問すれば、独立反対派との間でかなりの摩擦が起こるのではないかと私は思っていた。しかし李登輝さんは、そんな心配は気にもしていないといった顔であった。まるで、「お蔭様で、あなたのような日本人の同志とも堂々と会えるようになったのですよ。本当にありがとう」とでも言っているかのような表情だった。 それから数年、『台湾青年』誌がその役割を終え、幕を降ろすという。同誌はこれまで、台湾の自主独立の理論的正当性を広く内外に普及し、また知台派外国人を多数育ててきた。今や、それらの若手により台湾研究と交流が進められている。また台湾の在日青年の活動がめざましく、知日派の層も厚くなった。まさに一つの区切りの時を迎えたのではあるまいか。 二十一世紀はこれまで以上に、米中関係と台中関係が国際的に注目されることになる。台湾は、アジアの焦点になるばかりか、内なる改革もいよいよ必要になる。宗像さん、ご関係の皆様、本当にごくろうさま、そして、新しい時代に向けて益々のご活躍を。 |
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