| 両岸の軍事力と台湾海峡の平和 |
| 蘇進強/南華大学平和と戦略研究センター主任 2000年11月17日 楊鴻儒/訳 |
一. はじめに 国防無くして、安全はあり得ない。国防の安全は国家の発展、生存の主な拠りどころであり、古往今来を問わず、世界の普遍的な価値である。 まぎれもなく、国防安全の定義と範疇は、グローバル化、自由化、多元化した國際情勢により、広義的な「新安全観」になったが、地球村の概念は、人類共通の理想とは言え、その実現は一挙にしてできあがるものではない。共産集団国家は地域の安全について未だに虎視眈眈とチャンスを窺っている。第三世界諸国の内乱と内戦が盛んになりつつある今日、敵対国家間の和、戦は、相変わらず相対的国防戦力の威嚇と抑止を、その相互関係「権力」のキーポイントとしている。 台湾海峡両岸の局勢もそうではなかろうか? ソ連の崩壊により、原来米国、ソ連、中国を主として形成されたグローバルな戦略関係は、構造的な変化を来し、東西両陣営の冷戦態勢はすでに消失し、過去の中ソ国境の緊張した情勢も消失した。言うなれば、アジア・太平洋地域の大国間の軍事力対峙の情勢も緩和されつつあるが、アジア駐留米軍の縮小や撤退により、中国は即刻軍備を拡張してヘゲモニズム体勢を採って、この権力の空白を補填し、新たな衝突は未だ発生していないが、アジア諸国に「中国脅威論」の疑惑を惹起した。 相対的に、台湾海峡両岸の「平時の戦争」(war in peace time)の情勢は、交流が促進されても依然として改変されていない。中共の「武力侵攻を放棄せず」の威嚇と台湾の「もし中共が武力で台湾を侵攻すれば」の反発は、ずっと両岸間で唱和されている政治的合い言葉となり、諸国の戦略家も憂慮をしている問題でもある。 中共は当然武力をもって台湾を奪取する能力を有している。しかし、中共が軍事的勝利を収めるには極めて高い対価とリスクを負わなければならないが、それでは将来中共が台湾海峡に侵出しないとは保証できない。注意すべき点は、中共の弁証法的開戦は、単純な軍事行動ではないようである。 二. 中共軍の「世紀の大演習」と国防白書の軍事的、政治的目的を読む 中共の第15回五中総会が閉幕し、米国海軍の作戦部長が北京訪問を終えた時、中共軍は10月13日から五日間の「世紀の大演習」を実施し、16日には国防白書を発表、再び台湾に対する武力行使の「三つのイフ」を提起した。 「世紀の大演習」は1964年以降の演習レベルが最高で、範囲が最も広く、軍区を超えた諸軍兵種の聯合演習と称され、また、北京、武漢、南京で三つのインターネットを開設して、「大比武」(軍事技術の競技)と言う参謀演習を実施した。その深遠な政治的、軍事的意義は、わが国は更に一歩突きとめて探索しなければならない。 軍事専門の側から言えば、この「大演習」あるいは「大比武」は、中共軍が現代化に邁進した結果の総検収であり、中共軍が「人民戦争」の戦略から「ハイテク条件下の局地戦争」乃至は海洋に進出し、世界に対しての反覇権戦略思考の具現でもある。とくに、中共軍は近年来絶えず情報戦を強調し、この「大演習」も実兵演習のほかに、長沙国防科学技術大学遠隔教学センター、南京解放軍理工学院は、更にこの全軍事情報ネットを通じて、中共建軍以来初めて遠隔同時教学を実施した。その実行の可能性は検証し、評価しなければならないが、中共軍が情報戦を重視して、国防遠隔教学を応用した苦心は、中共軍の「軍事事務革命」(RMA)が、でまかせを言っているのではなく、具体な成果を収めていることを物語っている。言い換えれば、米軍とわが国軍が積極的に設立するC4ISRと、相対性機能を有するこの情報戦の仕組みが、一旦中共の軍事体系に組み込まれたら、中共軍のハイテク戦力の向上に裨益することは疑いないことである。 今回の中共軍の「大比武」は、七大軍区(北京、瀋陽、済南、南京、広州、成都、蘭州)の情報戦部門を動員し、その演習地域は、北京郊外、内モンゴルから渤海湾、東北の吉林まで、演習課目は電子戦を主軸とし、上陸と対上陸、妨害と対妨害、空挺と対空挺、戦術ミサイル攻防、潜水艦作戦および「三打」(対ステルス機射撃、対巡航ミサイル射撃、対武装ヘリ射撃)、「三防」(防御堅固、打撃強力、電子妨害の防衛、偵察監視の防衛)などを包括している。多半の課目は通常戦争の形態を想定しているが、「科学技術(テクノロジー)練兵」の域に到達しようとする企図があると言える。科学技術の建軍、練兵、用兵は、1990年以来の中共軍「軍事近代化」の究極目標である。今回の「大演習」の成敗と結果は、今後中共軍が更に「テクノロジー化」を確立しようとする発展の方向と路線になると予想される。 中共内部の権力脈動の角度から言えば、「大演習」は、江沢民がケ小平から権力を受け継いだ後、軍権を鞏固にした指標であり、江沢民が軍事委員会主席を継承した後、中共軍の国防予算は「二倍に増大」し、連年成長している。一面において、積極的に軍隊で江擁護勢力を扶植し、中共軍将官の若返りで、世代交代を促進して、中共軍の「人民戦争」の旧思考を改変させた。もう一面において、小規模、局地の演習、練兵によって、中共軍の戦力を逐次向上させ、また、中共軍の商売「金儲け」の気風を改めさせた。「大比武」の軍区競技における優劣の成果は、江沢民が更に軍区権力均衡の名を借りて、合理的に軍事委員会主席の権力を鞏固にするとともに、彼の「軍事近代化」の歴史的地位を顕在化することが出来る、中共軍の「軍事強豪」はもう出現することはなく、党が軍隊を指揮する、中共軍の「政治を講ずる」および、改革開放基調の支持は、更に深く浸透し、中共政権が内部を安定させる「希望工程」になると思う。 國際戦略の観点から言えば、中共の「大演習」の仮想敵国は、少しもカモフラージュせずに直接米、日両国を目差している。演習中に朱鎔基が笑顔で日本を訪問した際。表面上は、1998年10月の江沢民訪日で、歴史問題により生じた日中緊張関係を氷解させようとする気遣いは明らかである。しかし、実質的には、日本政府が「大演習」により「中国脅威論」疑惑を高めないようにする目的がある。 実質上、これも中共が一面において軍事力を増強し、他の一面においては平和、覇権反対を強調する「戦争弁証」である。「大演習」のメディア宣伝は、国内向けに解放軍の士気を鼓舞し、江朱体制を鞏固にするとともに、将来の権力交代の基礎を固めることである。対外的には、日本のTMD参入を抑止して、米国がTMDを配備するスケジュールを延期させる間接的効果がある。「大演習」地域は東南沿海から遠く離れ、台湾について言えば、表面上の善意を表したことになる。しかし、実質は「ソフトな語調、ハードな路線」の一石多鳥の計であり、甚だしきに至っては、TMDに参加するか否かの台湾の朝野間に分裂を生起させ、次に三通(直接の通航、通商、通信)と政治談判を促進し、台湾独立を制止する効果と利益を狙ったものである。 「世紀の大演習」が終わると共に、中共は二冊目の国防白書を公表した。その内容は古いことをむし返していると言える。台湾に対する武力威嚇の論調は何等の改変もなく、所謂「覇権反対」、「外国の台湾への武器売り渡しに反対」等の錯誤言論は、因果顛倒の屁理屈をこねたに過ぎない。その「覇権反対」の目標は米国、日本であり、覇権反対の理由は、中共が久しい前からの計画で自分を顧みて得意になり、アジア太平洋地域で覇を称えることにある。台湾海峡局勢の責任を米、日、台三者の相互関係に帰するのも、「加害者」が「被害者を叱責している戯言だ。具体的に言えば、わが国のTMD参入に反対するのは、実に「君は防御をしていけない」それは俺が君を攻撃するからだ」と、一方で我々も中共の国防白書は「一つの中国の原則」の宣伝をする政治道具であることをよく認識しなければならない。言い換えれば、中共国防白書の内容と公表の動機は、現代民主国家が国防白書を公表して、平和を尊重し、国防の透明化を表現する目的とは異なる。 三.「両国論」以降の台湾海峡の政治、軍事動態から 1996年3月の「台湾海峡ミサイル危機」から、99年7月9日、元総統李登輝氏が両岸関係を「特殊な国と国の関係」と規定するまで、台湾海峡両岸は顕著な相対的軍事行動はなかった。この期間中に、日、米安保条約の「新しいガイドライン」が改めて「周辺有事」と定義されて、台湾海峡の戦略地位が再び世界の注目の的になった。 事実上、97年4月、米国のクリントン大統領と日本の橋本元首相が東京で、安保条約について宣言し、会談した際、台湾海峡の情勢を重点に据えた。翌年1月、日本の防衛庁は従来編制の小さい「情報チーム」を拡大し、台湾海峡周辺の情報を重点に据えた。7月、江沢民がワシントンを訪問、中米の「建設的戦略パートナーの関係」仕組みの雛形について会談、98年1月14日、北京とワシントンで「中米海上軍事諮問協定」を締結、8月9日、クリントンが北京を訪問、上海で放送を通じて「新しい四つのNO」を宣言した。暫くたって、江沢民が日本を訪問したが、中日関係は江沢民の不遜な発言で低調に陥ち入り、日本の朝野は「新しい四つのNO」の受け取れを承諾しなかった。10月に辜振甫氏が上海を訪問して、汪道涵と会談、両岸関係は好転の兆しが見えるかのようであったが、99年7月9日、李登輝元総統が「ドイツの声」の取材に応じて、発表した「特殊な国と国の関係」で、情勢がエスカレートした。8月下旬、中共空軍の三機の戦闘機が台湾海峡の中間線を越えたが、わが国の国防部の調査によれば、天候の要因で誤って密雲に入り、それも単機飛行であった。しかし、中共軍が東南沿海で軍事演習を実施したとの噂は絶えず、12月末までに139回に達したと伝えられているが、実証できたのは6回だけ、それも1000人以下の兵站支援の動員演習だった。12月25日、中共軍がロシアから購入した「現代級」軍艦が、台湾海峡に國際海域を通過、わが国の3党の総統候補がそれぞれ「国防政策」を発表。連戦の意見は「積極防衛、遠距離ミサイルの開発」、宋楚瑜の意見は「前進防衛」、陳水扁は「境外決戦、縦深打撃、即刻反応」を主張した。 2000年1月25日、米国の国防ブレーン・ラント社が「Swaine Report」を発表し、台湾の将兵の訓練、保守能力が不足、兵役期間が短く、両岸の兵力が不均衡であると指摘した。2月21日、中共が「一つの中国の原則と台湾問題」の白書を公表し、「三つのイフ」―台湾独立、外国勢力が台湾を占拠、台湾が長期的に談判を長引かせた場合を、台湾に対する武力侵攻の要件としたので、米国の極度の関心を引き起こし、23日、米国航空母艦「キティホーク」が「テスト巡航」名目で台湾海峡を通過。3月、米海軍空母ニミッツ、キティホーク、駆逐艦スタンレーが台湾海峡周辺海域を数回巡航した。3月18日、陳水扁氏が第10代総統に当選し、中共が新政府に対して「その言語を観察し、その行動を見守る」と発表した。4月から5月にかけて、米海軍航空母艦キティホークが日本の横須賀母港から出港し、南シナ海で「西太平洋防線」を游弋した。5月13日、太平洋米軍総司令官ブレール、米国駐北京大使プレホが台湾海峡の情勢について楽観していいと表明し、かつ「中共軍は開戦を望まない」と述べた。5月8日、中共軍は海南島で小規模な演習を実施した。5月13日、米国の「科学者連合会」と国防情報センター「CDI」が、中共軍の東南沿岸の飛行場、ミサイル基地の衛星写真を公表した。この件について北京外交部のスポークスマンが「米国のある人が衛星写真を利用して、台湾海峡の緊張を引き起こしている」と指摘した。5月20日陳総統が就任演説で、両岸関係について談話を発表し、重ねて「五つのNO」を述べて、善意的相互対話の願望を披露したが、5月25日、中共軍は福建沿海地域で、7日間の火砲射撃訓練を実施すると発表。6月16日、陳総統が陸軍士官学校で「境外決戦」戦略を公表。8月に、外国の報道機関が、中共軍が台湾の総統選挙期間中に、板張りのミサイル模型で「偽の演習、実際の威嚇」をしたニュースを流した。軍事科学院の研究員は、中共の石油備蓄は1週間分もないので「台湾侵攻作戦」を発動することは根本的に不可能である」と指摘、8月、中共は「北戴河会議」を開催、「その言語を観察し、その行動を見守る」対台湾政策を継続し、かつ、両岸関係を「台湾人民に託する」願望を披露した。9月、台湾の国民党、親民党、新党の立法委員(国会議員)が相次いで北京を訪問した際、銭其?は「一つの中国の原則」を ≪台湾も大陸も一つの中国に隷属する」と言い直した。9月8日、米国は13億ドルの武器を台湾に売却する案(AIM−120空対空ミサイル、RCM−841対艦ミサイル、M109A5型155cm自走砲および、IMSG通信電子システム)を発表した。9月19日、米国の参議院が投票で「PNTR」案を採択して、中共に永久的経済貿易優遇案を与えた。10月2日、米国の国防部長コーヘンがワシントンで、次の声明を発表した。「台湾の情勢は緩和されつつある」。米国は引き続き「台湾関係法」と三つの公報を遵守する。中共は「武力発動を放棄しないが、目前武力を発動する意志はない」と承諾した。 以上述べた動態の発展からわかることは、台湾海峡の問題は両岸政府あるいは、「一つの中国の原則」で包括できるものではなく、米、日両国の台湾海峡問題への配慮は、アジア太平洋地域の安全が、両国の国家利益、國際安全、経済貿易発展に深遠な影響を及ぼすからである。 具体的に言えば、米国がアジア太平洋地域から得る経済貿易の所得が、その対外貿易の70%を占める。日本の対外貿易、エネルギー輸送の「生命線は、台湾海峡周辺の海域に頼らなければならない。地縁戦略から言えば、台湾は東南アジアと北東アジアが相接しているところで、西太平洋において、台湾は同時に2本の重要な戦略水道を即ち、台湾海峡とバシー海峡をコントロールしている。米軍の太平洋安全体系における戦略要域のほかに、日本の経済貿易活動が通過しなければならない海域でもある。 二次大戦において、日本軍は台湾を南進基地とし、マッカーサー元帥も曽て「台湾を太平洋の不沈空母」と形容して、台湾のこの地域における戦略地位を強調した。米軍が台湾から撤退した後、米国のグローバル戦略は書面では台湾を無視しているが、台湾の既成の地縁戦略地位を損ねるものではない。また、台湾はシンガポールと永年密切な軍事交流をしているが、軍事同盟国とは言えない。米国の「台湾関係法案」も、「防衛協力」とは言い兼ねる。しかし、シチュエーションレベル(Situation level)の安全弁の機能を持っている。 もともと、台湾海峡の安全は、中共の内部要因の制約と躊躇のほかに、台湾軍の抑止力および、台湾と国際間の密切な経済提携と、それから派生した政治効果によるものである。それ故に、台湾の位置付けは、政治、経済と安全のテーマを結び付けて、全方位の思考で、相互に支え合い、助け合って生成発展、更に大きい利益空間を広げ、国際的依存ネットによって、リスクを分散、減少させて、安全の効能を高めなければならない。それ故で、われわれが国防環境と国軍将来の発展を討議し、両岸の歴史および現状を思考するほかに、台湾自身の内在要因とアジア太平洋、世界の外在要因間の相互補完性と関連性も軽視すべきではない。 四. 両岸軍事力の対比、脅威と抑止 (一)両岸の軍事力と台湾海峡の脅威 台湾海峡両岸は長らく「平時の戦争(War in peace time)の状態を維持してきた。1979年以降、米軍は台湾から撤退したが、「台湾海峡中立化」の政策は、両岸の黙認の下に、引き続き維持され、双方とも台湾海峡中間ラインを越えない「瀬戸際戦略」(Margin Strategy)で相互に抑制して、台湾海峡の軍事衝突を回避してきた。然しながら、両岸とも台湾海峡の平和が持続的に安定を維持できるとは保証していない。 中共の「武力で台湾問題を解決することを放棄しない」に対し、台湾も台湾、澎湖島防衛を作戦指導の軍事戦略として、着実に実行し、所謂「戦争に備えるが戦争を回避しない、戦争は出来るが戦争を惹起しない」と、所謂「最低抑止戦略」 (The strategy of the minimum deterrent)である。 台湾海峡両岸の兵力対比が相当に大差があることは否認できない事実である。台湾が6倍以上の兵力、世界第二位の軍事大国中共の脅威下にあって、島嶼国防に必要な近代化された武装部隊を保有する理由は充分に存在する。しかし、脅威と抑止の間に、戦力の均勢で対応するだけでは、そのバランスを維持することは不可能である。 戦力対比の立場から言えば、中共は圧倒的に優勢である。台湾海峡の安全に脅威を与える最大の軍事要因は、200余万の兵員ではなく、中共の国防予算に占める比率が僅か15.5%の空軍と、その8.8%を占める海軍である。台湾から250海里離れた大陸の13の飛行場には、15分間で台湾上空に到達できるSU−27を含む各機種の軍用機が200余機配備されている。中共の軍用機は全部で3000余機に達する。しかし、大部分(主力)はミグ19等の地面誘導飛行、管制に頼り、天候良好な白昼だけ作戦任務を遂行でき、その全天候と夜間作戦能力は明らかに不足している。中共の東海艦隊も4〜6日の航海で台湾に到達する。その通常動力の潜水艦は老朽化したとは言え、台湾海峡を有効に封鎖することができる。しかし、これで台湾海峡が即刻脅威にさらされると言うわけではない。それは総兵力が戦力と同値ではなく、戦力も脅威のすべてではないからである。台湾海峡の海、空域の条件から言えば、中共も全部の兵力を台湾海峡の軍事衝突に投入することはしないし、またできない。 次に、中共の意図について言えば、「廃墟に化した台湾」で、台湾人民を懲らしめるのは、その「統一の大業」になんの利益ももたらされない。また、武力威嚇や「有限戦争」の手段を採用すれば、却って台湾が独立に向って邁進することを増幅する。一方、台湾海峡の軍事衝突は、中共が汲汲営営と進めてきた「四つの現代化」に深刻な阻害をきたす。 國際上、中共の戦争行為に対し、出兵して台湾を支援する国家はあり得ないかもしれないが、中共に対する経済貿易の制裁は予測できることである。また、台湾について言えば、台湾海峡の軍事衝突は、独立か壊滅かの二者択一の結果をもたらすであろう。しかし、中国について言えば、そのリスクコストは人員、飛行機、軍艦の数量化対比で計算できるものではない。 いうなれば、威嚇と抑止の関係は、均勢のバランスではないが、台湾海峡両岸の相対的戦力は、彼我の軍事近代化の努力により、益々向上している。しかし、軍事近代化は軍備競争と同一視することはできない。軍事近代化の意味は、兵器システムの増額購入や更新だけではなく、最も重要なのは、人員の素質の向上と制度、組織の健全を計ることであり、もう一方の意味は、専門化、科学化であり、また軍人の戦争に対する認識の理性化で、更に慎重に軍事に従事することである。 上記のように、兵力の総数において、世界第二番目の中共と、わが国の兵力の対比は、極めてかけはなれている。しかし、吾人の見方は次の通りである。
更に進めて言えば、中共が「台湾に対する武力侵攻」の威嚇の本質は、数量と軍事行動だけではなく、その軍事威嚇から派生した政治、心理効果が主な目的である。また、中共が國際社会において、前からずっと仮面平和使者(例えば、ぺルシャ湾戦争の調停および、台湾に対する平和統一の呼びかけ等)の役割を演じ、一方においては、強権的な覇道の顔つきで、台湾の國際での生存空間を封殺する行為は、われわれの熟知しているところである。台湾人民の最大の関心事は、中共が本当に台湾海峡に侵出した場合、國際友邦国家の反応および、台湾国軍の対策である。 (二)中共の台湾海峡の戦略とリスク 「Red China Rising」の作者Edward Tomperlake と William C. Triplettのワシントンポストへの投稿(2000.4.13)で指摘するところによれば、中共軍が軍備を拡張し、武力で台湾を侵攻する戦略は「四本の支柱」から成り立っている。第一は、米国の関与の可能要因を排除する。第二は、台湾に対するミサイル攻撃「正確な空襲」で、制空権を握っている台湾が中共軍に対する空中攻撃を防止する。第三は、台湾に対して情報戦を発動する。第四は、特殊種作戦の技術研究である。ハーバード大学Olin Institute of Strategic Studies のStephen Rosen所長によれば、中共のRMA(Random multiple access任意多重同時交信方式)の目的は、攻撃兵器の正確性を増進することである。一旦台湾に対して武力を行使した場合、米軍が支援に駆けつける前に、その軍事目的を達成させる。次は、情報戦とインターネットの攻撃で、米軍の反応速度を遅らせる。それ故に、米国は台湾にミサイル防御システムを提供するが、中共は台湾がTMDに参入することに反対する。所謂「台湾がTMDに参入することは両岸の軍備競争を引き起こすと。そういう言い方は、恰も「俺がお前を攻撃するのは、お前が自己防衛を企図するからだ」と言う「被害者叱責」の屁理屈である。 上述の論点と対照して、4月13日付きの香港新報が指摘したのは、一旦中共が台湾を侵攻したら五大「合併症」を引き起こす。即ち、外資の撤退、大量失業、新T独立、、チベット独立が機会を伺って動き出す、社会の矛盾が爆発して衝突を引き起こす等である。中共の民主運動活動家、在米学者曹長青氏は次のように指摘している。台湾の多くのメディアが一所懸命中共の台湾侵攻のセンセーショナルな言論を転載して、世論のアンバランス、事実の歪曲を引き起こして、中共政府側の威嚇宣伝の片棒を担いでいる。根本的に台湾は、中共軍が「台湾を攻撃できない」という事実がわからない。曹長青氏がさらに指摘したのは、中国大陸の経済が1979年から現在に到るまで、成長を続けてきたが、唯一のマイナス成長は99年である。主な原因は、台湾が大陸から資金を引き抜いたからだ。台商の大陸投資は400億ドルに達し、中共の米国に対する出超は160億ドルで、中共の外貨準備高は1507億ドル、対米貿易は700余ドルある。中共が軽率に武力を発動して、これ等の利益を犠牲にすることはあり得ない。 上述の評価は、大部分が軍事と経済面の視点からの観測である。しかし、中共内部の権力の角度から見れば、中共軍の「軍事強豪」が群雄一斉に頭を擡げ」、新しい権力闘争にエスカレートすれば、江朱体制が築き上げた経済改革を主軸とする指導部は、壊滅的な挑戦を受ける。経済改革が停滞したら、中国の政経社会も「多事多難の時期」に入る。況や、國際社会、アジア太平洋地域の安全もドミノ効果の影響にさらされて、不安な苦しい局面に陥り、グローバル戦略情勢にも大きい影響をもたらす。 わが国について言えば、中共の台湾侵攻は、全面的壊滅の始まりであり、台湾人民もこう言う情勢にならないよう願っている。 五. わが国の国防戦略と全民国防 既定の「防衛固守、有効抑止」の国防戦略あるいは、少し前に修正した「有効抑止、防衛固守」の戦略、両者の内容は同じく、守勢下の攻勢」である。即ち、自発的に攻撃しないが、一旦攻撃されたら、必ず報復する「積極防衛」の精神である。実質上、中華人民共和国の武力威嚇、日夜繰り返される「武力侵攻」威嚇に直面している台湾、澎湖、金門、馬祖の2300万の人民は、「戦争恐怖主義」の陰影の下に、安全、国防に対する願望と要求は、その他の民生ニーズよりも急迫感がある。例えば、台湾電力の停電、921地震等の重大自然災害、人為的事件について、一般の社会大衆、メディアや朝野の政治家等は、即刻「中共の仕業ではないか」、「もしこの時期に中共が攻撃を仕掛けてきたら」と反応し連想するが、それはあくまで憶測の域を脱していない。株式市場の不利、崩落の情報源は、中共軍動態に関するニュースが元凶である。李元総統が軍に株式市場調査用の回線設置を要求した気遣いもここにある。連戦、陳水扁の二人の総統候補が相継いで発表した国防政策、基本要求に大した差異はなく、国防の議題が朝野の最大コンセンサスの接点になったことは明らかである。 とにかく、中共の台湾に対する「戦争恐怖主義」の謀略神話を打破するには、当然受け身だけの「打たれても手を返さない」あるいは、消極的な「防衛固守」であってはならない。降服しない限り、全世界の如何なる国の国防戦略がひたすら防守だけを強調して、反撃戦略を軽視している国はないのである。目前の台湾の国力から言えば、若し中共と軍備競争をして、脅威と抑止の戦力容量の均勢を求めるのは、賢明なやり方ではないが、若し小をもって大に当り、手を拱いて外国の援助を待つかあるいは、衷心から中共が武力侵攻放棄の宣言を願うのも、国防戦略に対する「ニヒリズム」の無知である。実直に中共の軍事脅威と向い合い、実直に力に応じて、台湾、澎湖、金門、馬祖の固有領土の主権と、国防目標を保護、維持すべきである。イデオロギーの邪魔物を取り払い、実行可能な島嶼国家防衛のニーズにマッチする国防戦略を策定するのが、根本的なやり方である。地域戦略構造下の日米等国家の援助は、空中楼閣のようなもので、期待できないものではないが、自らを助けるべきものを、他人に助けてもらうものに置換することは、必然的に破滅の道に辿りつく。 表面上、「防衛固守、有効抑止」と「有効抑止、防衛固守」二者の差異は、字句の順序の入れ替えにみられるが、実質上、前者は比較的保守、消極的で、守勢戦略の法則とマッチしない。戦史において、如何なる戦争、戦役も抑止を優先し、「戦わずして、人を屈する」を、第一の目標にしている。通常、戦争は外交の折衝に失敗し、抑止が利かなくになった際に発動される。侵略者は大をもつ小をいじめ、先に「軍事力」をもって威嚇、愚弄して、小国が屈しなければ、戦争という「鉄拳」を下ろすのである。 台湾の局勢について言えば、中共の「戦争恐怖主義」下の軍事演習、ミサイル試射等の行為、または米国の「予防戦争」の策略も実を言えば、「抑止」が本音の作為である。 「有効抑止、防衛固守」の順序は、抑止を優先する戦略思考であり、また、「有効」を強調するが、その目的は中共と全面的な軍備競争をするのではない。「敵を師とする」視点から見れば、近年来、中共軍の「科学技術建軍」、「不対称戦争」の建軍思想で、解放軍の「第二砲兵」ミサイル部隊の技術、射撃が絶えず向上し、電子戦、軍事衛星も発展して、着実に検証すみである。言い換えれば、中共の「重点建軍」が行なっているのは「有効抑止」の路線である。中共の総体的軍事力は米国とは比べられないが、米国を威嚇できるのは、数百万の解放軍ではなく、「ミサイル」の脅威である。 わが国の軍事力、軍備は、中共軍の約1/6から1/8位であり、有効な抑止力を発揮して、中共軍の軽挙妄動的な武力侵攻を抑えているのは、40万あるいは100万の軍隊ではなく、ただの國際要因でもない。それは台湾軍の「絶対報復」の反撃力と、それから派生した巨大な無限の戦争リスクとコストである。北京の軍事情勢を知悉している戦略研究者は、北京が台湾海峡戦争を発動する策略は、すでに系統的で完全な研究をしていることを知悉している。それを実戦に移さない原因は、台湾が大陸東南沿海から揚子江河口附近にかけての都市に対して、報復力をもっていることに懸念を抱いているからである。一旦戦争が勃発したら、全国の2/3の生産値を生む経済生命線が、戦争の陰影下に覆われ、「中国市場」のインセンチブについて、外資も二の足を踏む。このリスクとコストは、台湾から掠奪するものよりに遥かに大きく、北京当局もこう言う結果は見たくないであろう。 上述の内容からわかるように、台湾の射程が大陸本土に届く中距離ミサイル、巡航ミサイルを開発するのは、「有効抑止」戦力を強化する必要性があるからだ。これも台湾が中共の戦争脅威に直面した必然的結果であり、さもないと、「只打たれて、打ち返さない」ことになる。 最後に、上述の「自発的に攻撃せず、攻撃されたら、絶対に報復する」の前提の下に、策定する国防戦略構想は「有効な抑止」を主軸とするのが妥当である。とにかく、若し「有効な抑止」ができなければ、両岸は軍事相互信頼のメカニズムを構築する空間も必要もなく、台湾は「只打たれるだけで打ち返せない」絶望的な境地に陥るのである。 |
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