| 台湾、そして台湾人──台湾は人権・自由・民主を尊重する独立主権国家である |
| 楊基銓/台湾総統府国策顧問 |
はしがき 昨年(2001年)の7月下旬、わたしはブラジルへ赴き、世界台湾人同郷会連合会(世台会)第28回年会に参加しました。その時、同会主催者が、大会二日目の会議で私が講演するよう手配して下さいました。事前に十分な準備ができないままではありましたが、、私は幾つかのことについて次のような私見を述べさせていただきました。
世台会のニュージーランド大会に参加した後、私は台湾に関心を抱き始めた。特に1996年、李登輝氏が初代民選総統に当選して後、台湾の民主化は飛躍的な進歩を遂げ、真の民主国家になった。しかし、台湾人の国家についてのアイデンティティは未だにはっきりしていない。人々は自分の国を何と呼ぶべきなのか分からず、自分は台湾人であるのか、或いは中国人であるのかはっきり表明することができず、さらに「中華民国」というこの国が一体どういう国か分からないままなのである。 我々の国家の名称は、表面的には「中華民国」であることに間違いはありません。但し、「中華民国」というこの名称は世界において通用しておりません。世界大多数の国、特に我々と密接な関係にある二大国、即ち米国と日本は、我々を「台湾」と呼んでいます。この二国のビザは、我々の中華民国のパスポートに直接捺印されるし、ビザに記載されている国籍は「台湾」であって「中華民国」ではありません。我々の国の名称は多種多様であり、ある時は自称「中華民国在台湾」、またある時はやむをえず「中華台北」と称し、我々政府の在外機関は「某某センター」、或いは「台北文化代表處」と呼ばれ、「中華民国」でもなく、「台湾」でもありません。 「貴方はどちらの方ですか?」と聞かれた時、人々の答えは往々にしてまちまちで、ある人は「私は台湾人です。」と言い、ある人は「私は中国人です。」と言い、また一部の人は「私は台湾人であり、中国人でもあります。」と言ういます。世界において、いわゆる「中国」とは「中華人民共和国」を指し、中国人は中華人民共和国の国民です。我々は中華人民共和国の国民ではないから、当然中国人じゃないはずです。昨年、立法委院の一、二の統一派の立法委員が閣僚クラスの官使に「貴方は中国人か否か?」と質問した際、この官使は「私は中国人ではなく、台湾人です。」とはっきり答えることができませんでした。私は彼がこの次同様の質問をされたとき、「私は台湾人です。」と声を大にして答えられることを切望しております。ここで私は、「台湾人であり、中国人でもある」ということは間違いであると強調したいと思います。英国人の血統をひく米国人は絶対に「私は米国人であり、英国人でもある。」とは言わないし、シンガポール人は「私はシンガポール人であり、中国人でもある。」とは言わないではありませんか。 我々のこの国がどんな国であるかについても、色々な言い方があります。ある者は、「この国は中華民国占領下の台湾であり、事実上台湾(国)ではあるが、中華民国に占領されて未だ独立していないのだ。」と言います。またある者は、「台湾に在る中華民国、即ち、1912年に成立した中華民国はまだ存在しているが、その領土は台湾(澎湖、金門、馬祖を含む)に限られている。」と言います。さらにある者は、「我々の国は主権独立の国家であり、その名称こそ中華民国と言うが、実はこの中華民国は領土・人民・政府・主権において1912年に成立した中華民国とは完全に異なっているので、事実上は台湾という国であり、中華民国の名称は単に表看板を掲げているに過ぎない。」と言います。 台湾人は自分の国家、自分の所属についてはっきりわからず、終始矛盾の中に生きています。この様な状況下で、私は国家のアイデンティティの追求に従事することを決心し、幾人かの親友と相談して国際文化基金会を設立し、シンポジウム或いはPRの方式で問題を探索、検討するとともに、一般民衆を啓蒙しようと思いました。私自身も文章を書いて新聞で発表したりしているのですが、ある日の朝、突然霊感が湧いてしたためた一文が、基金会で発行したパンフレット『私は台湾人であり、中国人ではない』です。これは自分の著作の中で、最も意を得た文章だと思っております。 昨年の9月21日、私は台中ロータリークラブに招かれて講演をいたしました。自問自答の方式で、『我々の国ー台湾についての認識とアイデンティティ』について説明をしました。この文章は当時の講演内容を加筆訂正したものです。内容には妥当でないところもあるかと思いますが、一句一句が私の常日頃の思いを込めて書いた肺腑の言葉です。どうかご指導の程よろしくお願い申し上げます。 本 文 先ず、我々の国家(「中華民国」と称するか、「台湾」と称するかを問わず)は、一つの国家であるか否か。考えてみましょう。ある者は、「我々の国家は一つの政治実体に過ぎず、国家ではない。」と言います。国際法に拠れば、国家の組織には四つの要素が具備されていなければなりません。四つの要素とは即ち、領土・人権・主権・政府です。我々の国家は台湾、澎湖、金門、馬祖と言う領土を持ち、その面積は世界約190余国のなかの大部分の中小国家より大きいのです。この領土には2300万人の人口がありますが、この数も大部分の中小国家より多いのであります。また、人民が直接選挙で総統を選出し、総統が任命した内閣が有効に領土及び人民を統治しています。総統の民選は人民主権の行使です。このように、完全無欠の領土があり、人民・政府・主権が存在し、政府が有効に人民を統治し、また軍隊を持ち、司法・立法等の機関もあり、五官が整然としているのである以上、我々の国家は明らかに一つの国家なのであります。 次に、我々のこの国家は一つの独立主権の国家か否か。我々の国家の権力・行使・立法・司法・軍事権等は全部我々の手に掌握されていて、如何なる外来の政権にも支配されていません。これは他のすべての独立国家と同様であります。そして、これは第二次世界大戦後無条件降伏により、数年間GHQの統治の下に置かれていた日本ともまた異なっています。当時日本政府の権力は制限され、行政権・立法権はGHQの監督、制約を受けていたからです。このように見れば、我々のこの国家が独立主権国家であることは、疑いをはさむ余地がありません。 但し、ここに一つの世にも不思議な現象があります。それは我々の国家は主権が独立しているのに、世界の他の独立主権国家と同等の処置を受けていない、ということです。第一に、我々の国家は国連に加盟することができません。毎年加盟を申請しているのですが、そのたび拒絶されているのです。世界独立国家の中で国連の加盟になっていないのは、加盟の意思を持たないスイスだけで、その他の独立主権国家は皆国連の加盟国です。第二に、我々の国家は国際の舞台に於いて、自国の国名、国旗、国歌を使用することができません。例えば、オリンピック、アジア大会、APECに参加する際、ただ「中華台北」の名称のみ参加を許され、我々の国旗、国歌と関係のない旗と歌を使用しなければならないのです。第三に、我々の元首は国際舞台に登場することができません。例えば、APECの非公式リーダー会議への参加さえ許されません。また、元首が外国を訪問する際にも往々にして妨害されます。第四に台湾海峡対岸の非友好適な隣人中国は絶え間なく文攻武嚇(PRによる攻撃と武力による威嚇)で我々を脅かしてきます。それに対し、我々はまるで属国であるかのようにただ低姿勢で対応することしかできないのです。これは、実に屈辱に耐えないことです。 我々の国家は主権が独立しているにもかかわらず、国際舞台に於いて、世界の他の独立主権国家と同様の処遇を受けていないのです。その原因は何か?ご承知のとおり、中国が「台湾は中国の一部だ」と主張しているからです。「中国は台湾をその一部と認定し、台湾に対して主権を擁しているのであるから、中国は台湾の政務に干渉する権利があり、台湾は中国を無視して勝手に国際舞台で行動してはならない。」というわけです。事実は、中国は台湾に一兵一卒もないので台湾の内政に干渉できず、ただ文攻武嚇で遠くから吠えているだけなのです。しかし、中国は国際舞台において干渉する力を持っています。国連の常任理事国である中国は国際舞台で発言権を持っているので、世界各国もその覇権的なやり方にどうすることもできず、抵抗も反対もできないのです。 中国が「台湾は中国の一部である」と主張するその根拠は、1972年にニクソン前大統領が中国を訪問して、毛沢東、周恩来等と締結した上海コミュニケにあります。このコミュニケの一節に「台湾海峡両辺の中国人は均しく、中国は一つであり、台湾は中国の一部であると主張する。」と書かれています。その後、「台湾海峡両辺の中国人は均しく」と「主張する」の字句は省略されて、「中国は一つであり、台湾は中国の一部である」の一句だけが語られるようになりました。中国は、外国の元首と相互訪問したり、他国と国交を樹立したりするたびに、いつもこの一句をコミュニケに入れ相手国に署名を要求していますが、大部分の国は皆take note、或いはacknowledge 等の字句で表明するだけであります。これは「承認」ということにはなりません。上海コミュニケの中で提起された「台湾海峡両辺の中国人」というのがいったい何を指しているのかも私もはっきり分かりませんが、あえて推測するならば、当時台湾で権力を掌握していた蒋介石政権及び中国大陸を統治していた共産党政権を指しているものと思われます。元来蒋介石政権はずっと「大陸反攻」或いは 「三民主義で中国を統一する」と叫んでいましたので、当然中国は一つであり、台湾は中国の一部であると認識していました。しかし、蒋介石政権のこの主張は、台湾人の主張を代表するものではありません。何となれば、蒋介石独裁統治下の台湾人は、如何なる言論の自由も奪われていたからです。 現在、問題は中国の「台湾は中国の一部である」という主張が果たして筋が通っているかどうか、正しいか否か、です。私の考えでは、中国は台湾が中国の一部であることを主張する理由がなく、台湾の政務に口を出し干渉する権利もありません。以下、その理由をいくつか申し上げます。 (1)法律上の理由
(2)事実上の理由 中国(中華人民共和国)と台湾は、事実上如何なる関係もありません。中国は台湾を占領したこともなく、一兵一卒たりとも台湾に上陸したこともなく、台湾に行政権を行使したこともなく、台湾人が中国に納税したことも兵役に服したこともありません。また、中国は台湾に対して如何なる貢献もなく、如何なる支援もしてしていません。中国が台湾に対してやっていることは、ただ文攻武嚇だけなのです。 (3)差異点の理由 台湾と中国は各方面に於いて差異が非常に大きく、双方が併呑、合併或いは統一するのは現実的ではなく不合理でさえあります。双方の差異点について、主要な事項を以下に列挙します。
以上述べましたように、法理、事実及び、差異等の視点から、我々は台湾は中国の一部ではないと主張する充分な理由を持つことができます。我々は台湾は台湾、中国は中国、互いに関係はなく、台湾の主権は台湾人民に属し、中国は台湾を併呑する権利はなく、台湾人民は中国の併呑、統一に反対であると主張します。 中国は理由もないくせに始終台湾は中国の一部であると大声で騒ぎ立て、台湾及び各国にその主張を受け入れるよう強制しています。各国とも唯々諾々と従うだけで、抵抗もせず、反対もしないのです。台湾はと言えば、主権の独立した国家であると主張はするものの、中国の台湾併呑に対する反対は声を大にして主張できず、各国の有力な支援も得られない、と言うのが現実です。なぜこのような事態になってしまったのでしょうか? 私が思うには、各国が中国を恐れているのは、ただ中国が大陸で強国で横暴だからではありません。本当は、問題は我々自身にあるのです。我々の内部においてコンセンサスが欠落し、対外的にも言い方が一致していないから、我々は強力に我々の立場を主張することができないのです。我々のコンセンサスがいかに欠落しているか、いくつかの例を挙げてみましょう。 (1)我々の政府は、自らを台湾政府と承認しないで、中華民国政府と称している。2300万の台湾人民が直接選出した総統及び、総統の任命した内閣は、国際舞台でとうに消滅した「中華民国」の名称を未だに堅持し、台湾の名義を使用しようとしな い。米、日両国が我々の国を正式に台湾と呼んでいるのに、我々政府自らが台湾と称していないのである。これはまさに一大諷刺図である。 (2)我々の政府は幾多の場面において、台湾の名義を敢えて使用しようとはしない。
(3)台湾の内部には、台湾のアイデンティティを持たない者が沢山いる。(いわゆる統一派で、本省人、外省人を含む。)彼らは台湾で育ち、台湾で生活はしていても心は中国にあり、台湾を彼らの祖国と認めていない。このような人は、陰に陽に中国と結託し、中国の為に宣伝し、「台湾は中国の一部」と言う中国の主張を呼応して、中国の台湾併呑に賛同している。人口から言えばこのような人たちの人数の比率は多くはないが彼らはディアを独占して騒動を引き起こすので、その影響力は無視できない。 (4)一般の民衆、なかんづく壮年以下の人々は大中国主義の教育を受けているので、台湾の歴史・文化について知るところが少なく、母語さえ話せない者もいる。その上、政府のリーダーの矛盾したやり方により、彼等の意識形態は曖昧で、強烈な国家のアイデンティティが欠乏している。また、近年来、一部の商売人が中国への投資、貿易に心を引かれており、中国が台湾を併呑する脅威の危機感が徐々に失われてきている。 (5)台湾で至る所に独裁時代の痕跡が残されているが、人々はこれに慣れてしまって、感覚が麻痺している。一例を挙げれば、台北の街路の殆どは中国大陸の都市名がつけられ、基隆路の外はいかなる街路も台湾の都市名が使用されていない。 (6)1946年に、中国大陸に範を取って考えられ制定された憲法を未だに使用し、我々の国家の規範としている。数次の改正を経たものの、その大中国の性格は少しも変わらず、それによって既定された国名、領土の範囲、政府の構造、憲法の運用等は、国家の事情に適合せず、我々の国家アイデンティティの主張に影響を及ぼしている。 (7)民進党が政権を担当して以来、大中国主義の国民党、及び親民党などの野党が国会の多数を頼んで絶えず抵抗し、反対の為の反対に終始しているため、陳総統の任命した内閣は有効に執政できずにいる。その上、国内の経済が衰退し、人心は不安に陥り、政局の不安定が引き起こされて、国民は国家の前途に対する自信を喪失している。 台湾は中国の一部ではあり得ず、中国は台湾の政務に干渉する権利はありません。現在、台湾は主権の独立した国家で、我々は中国の台湾の併呑には絶対反対です。これは我々の主張ではありますが、我々のコンセンサスが欠乏し、足並みが揃わない故に、中国の台湾に対する主権の主張に抵抗できず、我々に対する外国の力強い支援も得られません。この事に対して、私は次のような努力をしなければならないと思っています。 (1)国民の啓蒙
(2)Say No To China, Say Yes To Taiwan 運動 政府と民間が一致努力して、台湾の主体制を構築し、大中国の色彩の事物を廃棄すること。
(3)対外関係
(4)政局の安定と国民の自信の回復
(5)台湾の主権独立国家を名実ともに定着させるため 台湾の主権独立国家を名実ともに定着させるため、適当な時期に現実に適合しない現行の中華民国法を廃止して、新憲法を制定すること。必要に応じて公民投票を実施し、台湾の運命は台湾の住民が自分で決定するという立場を明示すること。 我々の目標は、我々の国家を本当の民主自由、人権尊重、平和愛好、且つ尊厳のある主権独立国家へと構築することです。そして、如何なる外力の牽制も受けず、国際舞台に屹立し、国連の一会員国として各友好国との相互提携、相互支援を得たいものです。 特に、我々と密接な歴史関係及び利害関係のある日本、米国、及び中国と兄弟国の友誼を結び、ともに提携協力してアジア及び世界の平和と繁栄に寄与することを、心から願ってやみません。 |
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