| 台湾よ、独立主権国家をめざして立ち上がれ! |
| 楊基銓/台湾総統府国策顧問・国際文化基金会董事長 |
現在、「中華民国」と称されている台湾は、独立主権国家であると言われている。確かに、台湾は、台湾本島、澎湖島、金門及び馬租に渡る領土を持ち、人口2300万を有し、人民によって直接選出された総統を擁し、これら領土と人民は総統が任命した内閣によって有効に統治されている。このように台湾は完全な領土、人民、政府及び主権を持ち、しかも台湾の国家権力は行政、立法、司法、軍事など凡てを自己の手中に掌握しており、いかなる外来権勢の統制も受けていない。 しかるに、主権が独立しているはずのこの台湾は、国際社会では尊重されず、独立主権国家としての扱いを受けていない。例えば、国連への加盟を毎年申請しているが、そのたびに門前払いを食わされている。また、幾多の国際活動の場で、自国の国名、国旗、国家の使用を許されず、元首の国際首脳会議への参加を拒まれ、元首の外国訪問さえままならぬ状況であり、特に理由なき中国の威嚇に対しても断固とした姿勢で対応できずにいるのである。 台湾がこのような不当な待遇を受けなければならないのは、ひとえに中国へのヘゲモニーの然らしめるものである。中国は「台湾は中国の一部である」と主張し、それ故台湾に干渉する権利があるとして、国際事務上、至る所で台湾を牽制、妨害しているのである。中国のこの主張は、1972年にニクソン米大統領訪中の際、毛沢東、周恩来らと共に署名したいわゆる上海連合広報に由来する。この広報の中に「台湾海峡の双方の中国人は、ともに中国は一つで、台湾は中国の一部であると主張している」というくだりがあった。しかし、後に「台湾海峡の双方の中国人はともに主張する」という箇所が省かれて、「中国は一つで、台湾は中国の一部である」という言い方だけが使われるようになり、この「すりかえ」文の受け入れを、中国は事あるごとに各国に強制してきた。「中国は一つで、台湾は中国の一部である」という一句は、実のところ、三十年前に初めて出現した言葉であるにもかかわらず、歴史を知らない人々は中国の罠にはまりこんでしまい、「ずっと昔からこう言われてきたのだ」と信じこみ、金料玉条としているのである。これぞ中国の思うツボであろう。 しかし、実際は、中国が「台湾は中国の一部である」と主張する根拠はどこにもないのである。理由は、次の四点にある。 1.台湾は中国の固有の領土ではなかった。台湾はもともと原住民が住んでいたが、後に漢人が渡航してきて雑居した。1624年、台湾を占領したオランダ人によって初めて政府が作られ、統治を受けた。その後、鄭氏三代の統治を経て、1683年に清国に併呑されたが、この時期の中国大陸は満州人の統治下にあった。 2.台湾は、数々の外来政権を受けてきたが、現在の主権は中国に属するものではない。 1895年、日清戦争による敗戦のため、下関条約によって台湾は清国から日本へ割譲されて日本の領土となった。その後、50年の日本統治の末、第二次世界大戦で日本の無条件降伏による終戦を迎え、周知のように1951年サンフランシスコ講和条約で、日本が台湾の主権を放棄したので、台湾は日本の統治から離脱した。しかし、この時、日本は台湾の主権を放棄こそしたが、日本が台湾の主権を中国に割譲したという事実はないのである。戦後、蒋介石の中華民国政府は、連合軍GHQの命によって、台湾における日本軍の投降を受理し、そのまま台湾に五十余年も居座り続けてしまったが、蒋介石政府の台湾占領は本来占領軍にこそ属する性質のものであって、蒋介石には台湾の統治権はなかったのである。また、中国は第二次世界大戦で連合軍が一方的にカイロで発表したカイロ宣言を振りかざして台湾が中国に属すべき根拠としているが、領土の帰属に関する規定は条約で決めるべきものであって、一方的な宣言は条約の効力を持ち得ない。現に、カイロ宣言はすでにサンフランシスコ講和条約に取って替わられているのである。 3.中国と台湾の間には何ら因縁がなく、隷属関係もない。中華人民共和国は台湾を占領したこともないし、中華人民共和国の軍隊が台湾に足を踏み入れた事実もなく、台湾で行政権を行使したこともなければ、台湾人が中国に対して納税や兵役の義務を尽くしたこともない。 4.台湾と中国は、政治制度、経済制度、法治、人権、経済発展、生活水準、民族性、生活習慣及び文化など 各方面において差異があまりにも大きく、双方が合併また統一することは明かに実際的でないし、また不合理である。 上述の理由により、台湾が中国の一部ではなく、互いに無関係であることは明かである。しかし残念なことに、「台湾は独立主権国家であり、中国に属してはいない」と主張する声は甚だ微弱で、世界各国の支持を得るに至っていない。その一方、「台湾は中国の一部である」と主張する中国の声は極めて大きく、各国とも唯々諾々とその主張を受け入れ、抵抗できないでいるのが現状である。このような事態に至ったことについては、無論中国の暴挙が第一原因であるのだが、そればかりではなく、実は台湾自身にも反省すべき問題があるのではないか。 台湾内部では人民の国家意識が低く、国家に対するアイデンティティに欠けるばかりか、一部の住民は中国に対してアイデンティティを持っている。政府の立場も確固たるものではなく、現在の政府は台湾人民が選出した政府であることを明言できず、「台湾は中国の一部である」という中国の主張に大声を張り上げて反対することができないでいる。地方で、政権交代後、野党の撹乱で政局が安定せず、さらに国民党の五十余年にわたる専制で形成された中国的色彩の遺毒が濃厚に残っており、未だに一掃されていない。これらの状況は、世界各国が「台湾は中国に対してコンプレックスを持っている、それ故独立主権国家たることを放棄しているのではないか」と誤解される一因となっている。 台湾が名実ともに尊厳をもった独立国家になり、中国の*梏から完全に脱出して世界村の一員としてしっかり屹立し、活歩できること、これが我々の一致した願いであるが、そのためには政府と人民がともに力を合わせて、次のことを達成するよう、最大限の努力を惜しまぬことが重要であり、これについて国家の指導者が力強いリーダーシップを発揮することを切望するものである。 (1)現政府が台湾人民によって選出された台湾政府であることを、政府自身が承認し、かつ明言すること。 (2)現在「中華民国」と称されているこの国は、1912年に成立したあの「中華民国」ではないことを、国民が認識すること。 (3)台湾は中国の一部ではないこと、また台湾の前途は台湾の人民自身が決めるものであることを、国民が認識すること。 (4)国民は、「台湾は中国の一部である」という中国の主張に断固反対し、かつ中国の一国二制の処置を認めず、中国の武力侵略に対して命を賭して自国を守ること。 (5)我々は台湾の住民で、「台湾が祖国である」とのアイデンティティを持つ者はすべて台湾人であると認めること。さらに「台湾人は中国人ではない」というスタンスをしっかり持ち、「台湾人でもあり中国人でもある」などという曖昧な認識を退けること。 (6)国交のない国に駐在する政府機関及び全国性の人民団体は、その名称に一律に「台湾」の名を冠すること。また、国内の政府機関や国営企業の名称は、すべて「台湾」を冠するか、「中国」の名称を廃止する。 (7)事務遂行上「中国」と混同されやすい名称、得に道路名や公共施設の名称を漸次廃止していくこと。 (8)「中華民国」の名称のパスポートの英語名称を「Taiwan Passport」に改めること。 (9)「台湾」の名称で、積極的に国連やその他の国際会議に加盟し、また積極的に国連やNGOの活動に参加すること。 (10)「台湾」を認めないメディアの報道を排除すること。 (11)台湾にアイデンティティを持つ議員を選出して、政局の安定を図ること。 (12)台湾と日本、米国の関係を強化し、台米、台日間の各階層、各方面との連携や協力、交流を促進すること。 (13)中国の経済発展は無限であるという神話を打破し、台湾の貿易・投資の対象は中国だけでなく、中国は多くの選択肢の一つに過ぎないことを認識すること。 (14)全力を挙げて経済の発展と政治改革を実行し、独立主権国家の実力を充実させること。 (15)適当な時期に、もはや時勢に合わない中華民国憲法を廃止して、新たに立憲に着手すること。また、必要に応じて住民投票を行ない、台湾の前途は台湾住民が決定するという立場を表明すること。 名実そろう国家主権独立があってこそ、初めて台湾に前途が開け、生き抜くことが可能になるのである。 註:本文は2002年7月20日自由時報に発表した文章の日本語訳である。 |
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