| アメリカの「三つのノー」と台湾── 虚構領土を放棄して、中国に平和友好を呼びかけよ |
| 宗像隆幸 本稿の中文訳は1998年7月4日『民衆日報』に掲載 |
クリントン米大統領が中国で「三つのノー」を確約したことは、それほど重大な問題ではない。それは米国政府がこれまで何度も表明してきた政策であり、大統領がそれを確認したにすぎないからである。それよりはるかに重視すべきことは、クリントンが「三つのノー」を言用したことに対して、民進党と建国党だけでなく、国民党と新党までが反対を表明したことである。なぜなら、「三つのノー」は、中国の要求であるだけではなく、蒋介石政権以来の国民党の基本政策にも合致するものだからである。 アメリカの「三つのノー」とは、@「二つの中国」と「一中一台」を認めない。A台湾の独立を認めないB台湾の国連機関加盟を認めない、の三点である。 国民党政権は一貫して「一つの中国」政策を堅持し、「二つの中国」を認めず、台湾の独立に反対し、将来は「統一」すると主張してきた。アメリカの「三つのノー」の@とAは、国民党の政策と全く同じである。国連には中華人民共和国が中国の唯一の正統政府として加盟しているのだから、国民党政権が「中国は一つであり、台湾は中国の一部である」と主張している限り、台湾の国連加盟が認められないのは当然である。台湾の国連加盟を不可能にしているのは国民党政権自身であり、アメリカの「三番目のノー」はこの現実を追認したものにすぎない。問題は台湾自身にあるのであって、アメリカやその他の国には責任がないのである。 国民党は、「一つの中国とは中華人民共和国のことではない」と言い続けている。しかし、国際社会の大部分は中華人民共和国が中国の唯一の正統政府であることを承認しているのだ。それが現実なのだから当然である。この現実から目をそらして、台湾を国際社会の孤児にしているのは、国民党政権自身なのだ。台湾の将来への道を切り開くのも、台湾の将来を決定するのも、台湾自身の責任であり、それは台湾にしかできないのである。 国民党と国民党の本流を自認している新党が、アメリカの「三つのノー」に反対を表明したことこそ重視すべきである、と私が言うのはそのためだ。台湾が中国の外に独立国家として存在している現実を認めれば、台湾が国際社会に参加する道は開けるからである。 アメリカは「台湾の独立」を認めないと言う。しかし、その「独立」の意味するものは何か。アメリカは中国の要求を受け入れる形で「三つのノー」政策を打ち出したのだから、その「独立」も中国の主張する「台湾独立」であると理解してよいはずである。中国は、「台湾は中華人民共和国の一部であり、その分離独立は認めない」と主張している。従って、中国が反対している台湾の独立とは、台湾が「台湾は中華人民共和国から分離独立する」と宣言することになる。こんなナンセンスな話はない。台湾は中華人民共和国に支配されたことは一度もなく、現に支配されていないのだから、そんな独立宣言をする必要もなければ、そんなことをするはずもなかろう。従って、アメリカの「台湾独立」反対は、台湾にとって何の痛痒もないのである。 では、台湾がやるべきことは何か? 中華民国の地図を見れば一目でわかるように、中華民国の公式版図には、いまなお中華人民共和国が含まれている。台湾の人びとは、蒋介石のように、いまなお中国を併合することを望んでいるのか? そうではなかろう。台湾の人びとは、中国との平和共存を望んでいるはずだ。相手国の領土を自国領だと主張しながら、平和共存を期待するのは根本的な矛盾であり、相手国に対しても失礼極まりない。 いま台湾が中国に対して行うべきことは、「中華人民共和国の大陸における領土主権を承認し、それを尊重する」という平和友好の呼びかけである。もちろん、単なる口先だけの呼びかけでは意味がない。公式に中華民国の版図から大陸を抹消することが必要である。それは、中国が台湾の領土主権を認めるか否かとは関係がない。中国は台湾に対して領土的野心を持っているのだから、中国にそんなことを期待するのは無理というものだ。大事なことは、台湾自身が行動することである。台湾は大陸に対する領土的野心を持っていないのだから、そのような虚構の領土主権を放棄することによって失うものは何もないはずだ。 国際社会が台湾を受け入れることができないのも、中国の反対が大きな原因ではない。それは小さな原因にすぎないのである。中華民国という国家は、公式領土のわずか三百分の一でしか現実には主権を行使していない。公式に領土主権を主張している版図の三百分の一でしか主権を行使していない国家を、どうして主権国家として承認することができるだろうか?少しでも国際法に配慮する国であれば、そんな非常識な行動はできなのである。 台湾が中国に対して、先に述べたような平和友好の呼びかけを行ったら、国際社会は台湾がやっと現実的な国家になったと歓迎することは疑いない。中国としても、自国に対する平和友好の呼びかけに対して武力で応じることができるはずはない。そんな非常識で非合理的な行動は、国際社会も決して許さないであろう。 |
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