| 見えてきた北朝鮮の崩壊 ギャング政権の延命を助けてはならない |
| 宗像 隆幸 2002年10月5日 |
九月十七日に平壌で行われた日・朝首脳会談で、金正日は北朝鮮が日本人を拉致したことを認めて謝罪した。北朝鮮が韓国の全斗煥大統領の暗殺を狙ってミャンマーでアウンサン廟を爆破したり、爆弾を仕掛けて大韓航空機を墜落させたり、国家事業として麻薬や偽札を輸出するなど、ギャングのような国家であることは、全世界が知っている。それにもかかわらず北朝鮮は、それらは全て敵の謀略かデッチ上げだ、言い張ってきた。そのギャング国家のボスが日本人拉致を認めて謝罪したのだから、金正日がよほど切羽詰まった境地に置かれていることは疑いない。 ブッシュ米大統領は、北朝鮮をイラク、イランと並ぶ「悪の枢軸」であると言明した。米軍のアフガニスタン攻撃でタリバン政権が為す術もなく崩壊したり、米国がイラク攻撃の準備を進めているのを見て、金正日は今にも自国が攻撃されるのではないか、と震え上がっているのであろう。そこで金正日は、米国の親密な同盟国である日本に接近することによって、米国の制裁を逃れる道を探ろうとしているに違いない。もう一つの理由は、経済的にも北朝鮮が窮地に陥っていることである。小泉首相は、「拉致問題の解決なくして、日・朝国交正常化はありえない」と言ってきた。北朝鮮が拉致問題を否認している限り国交正常化交渉を行わないということである。そこで、どうしても日本からの経済援助が欲しい金正日は、拉致を認めざるを得なかったのだ。 しかし、今回の日・朝平壌宣言には、日本が北朝鮮に援助を与えるのは国交正常化後であると明記されている。この共同宣言には、「核問題およびミサイル問題を含む安全保障上の諸問題」の解決を図ることも書かれているから、短期間に国交正常化が成るとは思えないが、最も苦しんでいるのはこのギャング政権に赤色テロで支配されている二千万北朝鮮国民であることを忘れてはならない。金父子政権の赤色テロで殺されたり投獄された国民は百万単位に上ると見られており、餓死に至らしめられた国民も百万人を超えると言われている。この凶悪な赤色テロ政権が一日長く続けば、北朝鮮国民の苦しみも一日長引くことになる。従って、この赤色テロ政権の延命を助けるような大規模援助は決して行ってはならない。 今回、金正日は自分の知らない間に特務達が日本人を拉致していたので彼等を処罰したと語った。恐怖政治(terrorism)による支配の先兵である特務達に責任を転嫁するようになれば、もはやそのような専制独裁政権の寿命は長くない。特務達が上部の指令をサボタージュするようになるからだ。 江南(本名=劉宣良)暗殺事件が、そのよい例である。『蒋経国伝』を書いた中国系米国人の江南がカリフォルニアの自宅で台湾の特務に暗殺されたのは、一九八四年十月十五日のことであった。米捜査当局は、国民党の特務機関の一つである国防部(省)情報局長の汪希苓中将が竹聯幇(台湾で最大の「外省人」系暴力団)のボス・陳啓礼に江南の暗殺を命じ、彼の部下が暗殺を実行した証拠を掴んだ。汪希苓に江南暗殺を命じたのは、蒋経国の息子でその後継者と目されていた蒋孝武であることも、米国で逮捕された犯人たちの一人の自供でわかった。そこで米下院は、汪希苓や陳啓礼らの引き渡しを要求した。もし汪希苓を米国に引き渡せば、蒋孝武が江南の暗殺を命じたことも明らかになったであろう。困った蒋経国は、米国への引き渡しを拒否して汪希苓や陳啓礼らを逮捕させた。彼等の投獄は形ばかりで、何不自由ない生活だったといわれているが、表彰されるべきところを投獄されたのだから、特務達の忠誠心が揺らぐのは当然でる。その後、蒋経国政権が急速に弱体化していったことは周知のとおりだ。 日本は北朝鮮と交渉を続けながら、金正日政権の崩壊を待てば良いのである。同じことは、韓国にも言える。 韓国は、「太陽政策」で北朝鮮に援助を与えているが、これは金正日政権の延命を助けるだけだ。表面では「統一」を言いながら、韓国が「太陽政策」を取っているのは、北の共産主義政権が崩壊して、ドイツ型の統一が実現することを恐れているからであろう。西ドイツは世界でもトップクラスの経済先進国であったし、東ドイツは共産圏の経済優等生だった上に、東ドイツの人口は西ドイツの三分の一にも満たなかったが、それでも旧西ドイツは統一によって大きな犠牲を強いられた。ところが、韓国の経済力は旧西ドイツに較べてはるかに劣り、北朝鮮は旧共産圏の中でも経済劣等生であり、しかも北朝鮮の人口は韓国の半分もある。ドイツ型の統一が行われた場合、韓国が担わなければならない経済的負担は、旧西ドイツの何倍あるいは何十倍にもなろう。しかし、金正日政権の滅亡は避けられないし、その後の北朝鮮に新しい政権が生まれたとしても、自力で経済復興を行える見込みはない。民主化と経済発展によって北朝鮮国民を救うには、韓国によるドイツ型の統一以外に道はないのである。そのような統一が実現した時こそ、近隣の経済力を持つ民主国家として、日本は大いに韓国を援助しなければならない。それが、東アジアの平和と安定のためにも役立つのである。 |
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