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今度の総統選挙で、台湾の将来は決定される
宗像 隆幸/アジア安保フォーラム幹事   2004年3月8日

1971年の国連決議に隠された重大な意味

総統選挙のテレビ討論で、陳水扁総統の「一辺一国」論に対して、連戦主席は「一つの中国」論を主張し、「われわれの言う一つの中国とは中華民国ことである」と述べた。国際社会から見ると、この連主席の「一つの中国論」は非常識なだけでなく、台湾の存続を脅かす危険極まる論理である。有力な総統候補者がこのような発言をしても大騒ぎにならないのは、台湾ではその危険性が十分に理解されていないからであろう。

1971年10月25日、国連総会において「中華人民共和国の代表が国連における中国の唯一の合法的代表であり、蒋介石の代表を国連および全ての国連機構から即時追放する」という決議が行われた。国連が「一つの中国とは中華人民共和国である」ことを認定したのであり、それから30数年もたった今日、この認定に異論を唱える国はない。連主席の「一つの中国」論は、この国際社会の共通認識に全く反するのだから、非常識と言う他はなかろう。しかし、もっと重要なことは、この国連決議に隠されている意味である。当時の台湾は恐怖政治の下で言論の自由がなく、この隠された意味について論じられることがなかったために、今日に至ってもなおその危険性が十分に理解されていないのであろう。

とは言え、国連憲章第23条に安全保障理事会の5常任理事国の一つとして中華民国の名が書かれているのを見れば、誰でも疑問を持つはずである。1971年の国連決議により、中華民国に代わって中華人民共和国が国連に加盟したのに、なぜ国連憲章に中華人民共和国の名はなく,中華民国の名が残っているのか?  中華民国が存在していることを認めるなら、国連憲章の「中華民国」は「中華人民共和国」に改めなければならない。国連がその必要性を認めなかったのは、「すでに中華民国は中華人民共和国に継承されて消滅しているから、国連憲章に書かれている中華民国の文字は中華人民共和国を意味する」と、国連が解釈したからなのだ。これが1971年の国連決議に隠されている重大な意味である。

台湾は中華民国の領土ではない

1945年に台湾を占領した蒋介石政権は、カイロ宣言とポツダム宣言を根拠として、「台湾は中華民国の領土になった」と主張した。もし、この主張を認めるなら、台湾も中華人民共和国に継承されたことになってしまう。しかし、「台湾は中華民国の領土になった」という蒋介石の主張は、国際法に反するものとして、国際社会では認められていない。第2次世界大戦の1943年11月、ルーズベルト米大統領、チャーチル英首相、蒋介石中華民国総統の3者会談がカイロで行われた。この時、苦戦している蒋介石を激励するために、台湾を中華民国に与えようと主張したのはルーズベルトである。3者会談後に発表されたニュース・リリースに、このことが盛り込まれた。このニュース・リリースがカイロ宣言と呼ばれている文書である。しかし、1895年の日・清平和条約で台湾は正式に日本の領土になった。米国の領土でも英国の領土でもない台湾を、米大統領や英首相が勝手に処分できるわけはない。だから米国と英国は、カイロ宣言のこの条項は国際法上の効力を持たないことを認めたのである。カイロ宣言のこの条項が無効なのだから、ポツダム宣言にその履行が謳われていても意味はない。ポツダム宣言は日本に対する降伏勧告だから、もともと領土問題に関して法的効力はないのである。戦争においては当事者の一方が降伏して戦闘が終わっても、それは休戦に過ぎず、国際法上の戦争の終結は平和条約を待たねばならない。戦争の結果に基づく領土変更などの戦後処理は、平和条約によって行われるのが国際法の原則である。1952年に発効したサンフランシスコ平和条約で、連合国と日本の戦争は国際法上も終結したが、台湾に関しては日本が領土主権を放棄することを定めだけで、その帰属については一切触れられなかった。蒋政権は連合国最高司令官の命令で台湾を占領しただけであって、台湾は中華民国の領土になったわけではないのである。

台湾の将来を決定する権利は台湾人民だけが有する

ここで一つの奇妙な事実が浮上する。台湾には経済的に豊かな自由で民主的な国家が存在している。2,300万の人口を有するこの国家は、他のいかなる国にも支配されておらず、どこから見ても立派な独立主権国家である。それにもかかわらず、中華民国は国際法で認められた領土をもっていないのだ。国際法では、国民と領土、主権、政府の四つが揃っていなければ、独立主権国家と認められない。ところが中華民国には、合法的な領土がないのである。これこそ、国際社会が台湾を承認できない根本原因であり、李登輝前総統が「中華民国は存在しない」とおっしゃったのも、このことを指している。

それでは、どうすればよいのか。簡単なことである。台湾の主権者である住民が、台湾の帰属を決定すればよいのだ。人民自決の原則は、国連憲章第1条に規定されているだけでなく、国際人権規約第1条「人民自決の権利」の第1項に「全ての人民は自決の権利を有する。この権利に基づき、全ての人民はその政治的地位を自由に決定し、その経済的、社会的、文化的発展を自由に追求する」と明記されている。まず自分たちの政治的地位を自分たちの意志で決定できなければ、全ての人権は空論になってしまう。人民自決の権利こそ、全ての人権の基本になる権利なのだ。

台湾の人びとが自決権を行使して台湾の帰属を決定する場合、二つの選択肢が考えられる。一つは、台湾の中国への統合である。それは、台湾の主権者である住民が、台湾の領土主権を中国に付与することを意味する。もう一つは、台湾の人びとが自分たち自身の国家を創建することである。そのためには、台湾の人びとが憲法を制定することによって、いかなる思想と制度に基づく国家であるかを定めればよい。

国際社会が「すでに中華人民共和国に継承されて消滅した」と見なしている中華民国に固執するかぎり、台湾の将来は中国への統合以外にないであろう。台湾の人びとが国際社会で認められる自分たち自身の国家を持ちたいと思うなら、台湾憲法を制定する以外に道はない。2人の総統候補は、明確にこの二つの道を示している。今度の総統選挙は、台湾の人びとがどちらの道を選択するかを決定する選挙である。


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