| 李登輝氏の大戦略──台湾団結聯盟の意義 |
| 宗像 隆幸/アジア安保フォーラム幹事 |
李登輝前総統を事実上の指導者とする台湾団結聯盟(黄主文主席)は、八月十二日に台北市で結成大会を開いた。 連戦が主席になってから国民党は、李登輝総統(当時)が打ち出した「台湾と中国の関係は国家と国家の関係である」とする「二国論」を否定して、「一つの中国論」に逆戻りしてしまった。このような逆コ−スを辿る国民党に対して、団結聯盟は民進党以上に台湾中心主義(台湾優先)が濃厚な政策を打ち出し、「中華民国(台湾)と中華人民共和国が並存している現実は否定できない」という現実認識の下に、(1)政局の安定(2)経済の振興(3)民主の強化(4)台湾の壮大化を、四大基本政策として掲げた。 「海洋よ海洋、新台湾の海洋、母親の乳・・・」という党歌に象徴されるように、団結聯盟が目指すのは海洋国家・台湾であり、理念的にも政策的にも、中国にすり寄る連戦の国民党とは正反対である。団結聯盟は結党と同時に三十九人の立法委員候補者を発表した。基本政策の第一に「政局の安定」を掲げたことからも明らかなように、団結聯盟の当面の目標は十二月一日の立法院選挙で一人でも多く当選させ、民進党と合わせて立法院の過半数を制し、陳水扁政権を安定させることである。 立法院の現有勢力は、定数二百二十五席(欠員六)のうち、国民党百十三、民進党六十六、親民党十九、中国新党七、その他無所属等十四である。三割与党の民進党は、野党の反対でほとんどの政策を立法化できず、経済不況にも効果的な対策を講じることができない情況だ。それを陳水扁政権の無能のせいだと攻撃することによって、野党は年末選挙を有利に運ぼうと策している。 このような情況だから、官僚たちの多くも国民党が政権を奪回する可能性があると考え、その場合に報復されることを恐れて、民進党政権への積極的な協力に躊躇している。立身出世を身の上と知るのは官僚の習性だから、これはやむをえない。陳水扁政権が迷走状態から抜け出すためには、立法院で与党が多数を制する以外に道はないのである。 国民党崩壊、与党が絶対多数を制する可能性も もし、年末選挙で立法院の構成が現状とあまり変わらなかったら、国民党は政権奪回への自信を深め、小数与党の民進党政権は迷走を続けてのたれ死にすることになろう。このような危機感から、総統退任後の沈黙を破って李登輝氏は、台湾団結聯盟の結成を推進したのであろう。その結果は、どうなるのであろうか。 台湾団結聯盟が結成される前に、李登輝氏は民進党八十五議席、団結聯盟三十五議席という目標を語った。百十三議席で過半数だから、八十五議席プラス三十五議席なら、百二十議席となり、与党は立法院で安定多数を確保することになる。 台湾のマスコミの現在の予想では、民進党は一〇から二〇議席増えることになりそうだ。初めて政権党となった強みがあるからその程度は議席を増やせるであろう。李登輝ファンの支援で、団結聯盟は十五から二十五議席はとれると見られている。統一派の親民党は、宋楚瑜主席の実力と資金力で、二〇から三〇議席増えると予想されている。三党で四十五から七十五議席増える計算である。これでは、国民党の大惨敗は避けられそうもない。 そうなると、国民党は党主導による政権奪回の希望を絶たれ、官僚も国民党に見切りをつけることになる。半世紀以上も政権を独占してきた国民党が、このような情況に耐えられるわけはない。国民党に残された道は二つに一つ、民進党と団結聯盟の連立政権に参加して政権復帰を果たすか、親民党と手を組んで次の総統選挙で政権奪回を狙うか、のいずれかである。しかし、次の総統選挙で宋楚瑜が勝つ保証はない。昨年の総統選挙は陳水扁、宋楚瑜、連戦の三つ巴となったからこそ、宋は陳と接戦を演じたが、台湾人とチャイニ−ズの一騎討ちになったら、チャイニ−ズの宋に勝ち目はないと見るのが常識であろう。 国民党議員のうち、チャイニ−ズを中心とする統一派は、独立派の民進党・団結聯盟政権に参加するわけには行くまいし、また受け入れられもしないであろう。しかし、李登輝氏が総統だった時代、李登輝派が国民党の大多数を占めていたのである。元李登輝派国民党議員は、大挙して民進党・団結聯盟政権に雪崩込むことになるであろう。国民党の分裂、終焉である。 そして、政府与党は安定多数どころか、立法院の絶対多数を制することも夢ではない。そうなれば、陳水扁政権は、独立路線に基づく本来の基本政策を実行に移すことが可能になる。李登輝氏が打ち出した団結聯盟構想は、このような可能性を秘めた大戦略である、と筆者は思っている。 民進党と団結聯盟で議席の半数近く獲得すれば、この大戦略は成功しよう。問題は、陳水扁政権が、期待を裏切って李登輝政権時代よりも台湾独立の推進で後退したため、本来の民進党と陳水扁の支持者が意気消沈していることだ。民進党の勝利には、彼らの積極的な活動が不可欠だからである。彼らの奮起を期待したい。 |
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