2月28日、市ヶ谷で開かれた台湾独立建国聯盟の二・二八革命56周年記念会へ行ってきました。
会場の奥には、世界台湾人旗と色違いの聯盟の旗が掲げられ、向かって右側には「中国の台湾侵略反対!」、右側には「中華民国体制打倒」というスローガンがあります。また羅福全駐日代表および陳明裕在日台湾同郷会会長から贈られた花もありました。
午後6時半から始まるのですが、数分前に会場に着いたときには、席が残り少なく、「前のほうなら席があります」と案内されて前のほうに座りました。会の途中で主催者側から、立ち見の人がロビーにあふれているので、それまで6人がけだった席を7人がけで座るようにという要請がありました。主催者の予想を超える参加者が詰め掛け、200名ほどになったようです。
一、廖建龍氏「中国共産党の行く末を占う」
会は周英明氏の司会で進行しました。まず、廖建龍氏が「中国共産党の行く末を占う」と題して講演しました。何清漣『中国現代化の落とし穴』を土台にして、独自の視点も入れたものということでした。現在、中国へ海外の企業が進出するのはゴールドラッシュのようなものだ、止めることは出来ない、という話から始まり、これまで国有であった会社や土地が切り売りされ(私有化)、その利益の一部が官僚の懐に入っていること、また資本が海外流出しているので、富が蓄積されないこと、また富の分配が不均衡な形になっていることなどを紹介しました。これは1910〜30年代の国民党さながらであるとし、中国は変わらない、と結びました。中国を離れることになった宋美齢(蒋介石の夫人)が、欧米の記者たちが中国共産党の清廉さを誉めているのを聞いて「彼らは権力の味を知らないのだ」と言ったというエピソードを紹介し、これは裏を返せば、「権力の味を知れば国民党同様に腐敗する」という予言なのですが、これが的中したという見方を紹介しました。
二、黄文雄氏「2004年、陳水扁総統再選成るか」
二番手は、黄文雄氏が「2004年、陳水扁総統再選成るか」という題で講演しました。陳政権がこれをやれば必ず再選されるという中長期的課題として5点指摘しました。(1)マスメディアが統一派に握られているという問題への対処、(2)教育が統一派に握られているという問題(たとえば『認識台湾』は実際には採用を拒否さるケースが多いいという話が紹介されました)、(3)国家、社会、民族についてのアイデンティティの問題、(4)台湾主体意識の確立、(5)「台湾人は中国人ではない」とはっきり示すこと、だそうです。
短期的課題として、新瑞都事件や、劉泰英の捜査などにおいて、元高雄県長など、今の段階で逮捕すべきでない人まで逮捕している問題や、台南県の陳唐山県長が行った人事が、全部、覆されて、同県の業績が全国最下位になってしまったという問題を挙げました。今度の選挙では本土派が消極的になることが懸念されるが、選挙を左右するのはイデオロギー的ではない中間層、青年層の動向なので、民進党は技術的に勝負をかけることが出来る、また台湾人は経済に関心を持っているので、経済運営を任せられるかということで評価されるだろうということでした。
ここ3年、不安に思われる点として、民進党は錯覚があるのではないかと感じさせる部分が9つあるということでした。(1)陳水扁総統誕生を新中間路線の勝利と評価していること、新中間路線という曖昧模糊とした路線で勝利できるのだろうか。(2)政党政治をすれば良いのに、なぜ全民政府を強調するのか。(3)統一派がやりたい放題の「言論の自由」は国防以上に大切なのか?(4)対中国政策で商売人の考えを優先していること、(5)[才并]経済(piaN keng-che)といって経済優先にしているが、経済がどうにもならないような状況においてこれを第一に掲げるのはどうか、(6)三民主義・五権憲法の中華民国を守りつづけることは放棄すべきではないか、(7)統合論:経済→文化→政治という中国との統合に言及するのは統一派や中国への配慮であろうが、いったいどうしたいというのか、ハッキリさせるべき。(8)台湾独立は毒薬という考えは問題だ、(9)台湾の将来、国家目的や方向性がハッキリしていない。目標も無ければ戦略も無い。群策会には『台湾総目標』というのがあるが、そういうのが無くて選挙に臨むのはどうか、ということでした。
以上のことから、今度の選挙について「絶望はしていない」、台湾は奇跡が起こるので、その奇跡が起こるというかたちで再選の可能性はある、とかなり消極的な見方を示しました。最後に、奇跡を作り出す5つの方法として:(1)国家目標と戦略をハッキリさせる、(2)台湾人の主体性の方向性を示す、(3)世界における台湾の位置付けを明確に示す、(4)中華民国を守りつづけるのか早く態度を決めたほうがいい、(5)中国人は台湾人に幸福をもたらさないことをハッキリと表明すべき、と指摘しました。
三、金美齢氏「台湾正名運動」
最後は金美齢氏が「台湾正名運動」という題で話しました。黄文雄氏はすっかり評論家になってしまったが、「私は評論家ではなく当事者です。「奇跡」を起こす側にまわります」と宣言し会場を盛り上げました。現状認識として、「私たち」が苦労して手に入れた自由のもとで、統一派が言いたい放題であるが、その自由な台湾が、逆戻りするかもしれないというクリティカルな時期であると指摘しました。台北市長選での惨敗、本土派が強い高雄でさえ僅差であったことから、本土派に熱がこもらなかった。政権握ってこれだけしか出ないのか、という状況である。今度の選挙は、「中国なのか台湾なのか」という選挙であり、「中国人なのか、台湾人になりたいのか」そういう命題を突きつけてこそ、奇跡が起こるのだとしました。陳水扁支持の40%を過半数にするために、まず正名運動をする。これは名誉招集人就任の要請を受けた李登輝氏が、総招集人として、5月11日に十万人集めるために具体的にアドバイスをするなど関わってくれていると紹介しました。また、陳水扁支持および連宋支持の「鉄票(固定支持者)」は両派30%くらいで、残り40%が、そのときの気分で動く、とし、「私がそういう人たちを動かします」と宣言した。
台湾では金美齢氏は、テレビ番組に出演すると討論番組で、統一派と喧嘩してばかりで、そういうイメージばかりついてしまったが、この前、『台湾の心の声』というインタビュー番組に出たときには、司会者の政治的な質問を遮ってソフトな話がしたいと、日本での生活について語った。12月の『家庭画報』のエージレス宣言という特集でインタビューを受け、台湾茶を楽しむ生活が健康のもとであると、台湾茶を勧めているんだという話をしたところ、外省人二世の視聴者から、トラブルメーカーとばかり思っていたが、そうではないことが分かった。「不做不錯(何もしなければ始まらない)」という言葉に感銘を受けたという反応があった。茶の産地、竹山の生産者からもタイアップの申し込みがあり、もう台湾茶の会を開催して「中国茶とよく言うけれども、本当は台湾の茶がおいしい。“台湾茶”です。」と奨めているんだと台湾でのイメージチェンジおよび自身のソフト路線について紹介しました。今度の選挙は、台湾にとってもクリティカル。ということは日本にとってもクリティカル。というのも、逆戻りしたら、(統一派が政権を二度と放そうとせず)台湾は中国に統合されてしまう方向に向かうから。「私が奇跡を起こす側にまわります。皆さんもお力添えください。」と結び、会場からの大きな拍手を受けました。
四、質疑応答
質疑応答では、廖氏に対して、中国人にとっての「公」とは何か、という質問があり、廖氏は「ない」と応えました。司会の周英明氏は、中学校から中華民国の教育を受けたが、天下は公のためという、至極当然のことを、なぜ繰り返し教えるのか当時不思議だったが、高校卒業の頃には中国人には「公」の概念が無いから、あんなに強調する必要があったのだ、と分かるようになったという経験を紹介しました。また中国では「易姓革命」というが、この言い方も、姓が変わるという「私」の領域での変更と捉えているんだという解釈を示しました。
また、金氏に対して、正名運動と中華民国体制打倒のために最低限必要な新憲法制定の関係、タイムスケジュールについて質問をしました。金氏は「ハッピーな生活をしたいなら私の言う候補者に投票しなさい」と勧め、あくまで金氏なりのスケジュールだがと断った上で、陳水扁氏は2004年の総統選挙に勝ってからの4年間で必要なことを行うだろうと指摘しました。新憲法制定は正名運動のもう一つのスローガンで、陳水扁氏は再選後、住民投票案を決定して実施し、これで過半数を取った後で、これを根拠に新憲法制定へ向かうということでした。
五、会場での体験と雑感
その後、ある日本人出席者が個人的に「台湾は主権独立国家なんだから、新憲法制定は必要ない。改名だけでよい」と話し掛けてきました。私は、日頃から国号変更だけでは、台湾のさまざまな矛盾を解決できないと考えているので、ムカッとしてしまい、丁寧に議論に付き合わずに、相手から憲法改正の必要はあるという言葉を得ただけで、その場を離れてしまいました。もし正名運動が本当に名前だけを変えて、現在の大中国主義にもとづく憲法や各種統治機構の改革を求めない運動ならば、そんなバカバカしいことはありません。国民党のマークが付いた国旗を掲げておいて中華民国ではないというのは欺瞞もいいところです。金氏が公開の場で答えていることからすれば、正名運動は台湾が台湾であるための、第一歩にすぎないのです。
それと同時に、日本李登輝友の会発足時に交流協会の内田氏が、独立派を牽制した言葉を思い出して嫌な気分になりました。台湾の住民の大多数の意見で台湾が変わることに、日本はなぜ反対するのだろう?もしかして日本は、「一つの中国」が中華人民共和国政府と中華民国政府に分かれて争っている構図の方が都合が良いのではないか?仮に台湾が中華民国体制を捨てて独立したときに、日本はこれまで、中華人民共和国の言いなりになって、台湾人を中国人と扱ってきた、このことに対して、新たな判断を求められるのが怖いのではないか?台湾の政府をこれまで承認せずに、屈辱的な扱いをし、台湾にたかっていた(そういう議員もいたそうですね)、そういう台湾に対して高圧的でいられた地位を、台湾を国家として承認した際には失ってしまうことを日本が恐れているのでは、と漠然と感じました。
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